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「遠隔医療システムで、一つでも多くの新しい命を育てて行きたい」

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【代表取締役 尾形 優子】
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。㈱ファモス、㈱アムロン、㈱イノベイにて、ITシステム開発等を行う。1998年度診療所向け電子カルテ開発(経産省事業)、2000年度四国4県電子カルテネットワーク事業(経産省事業)への参加を契機に医療システム分野での起業を決意し、2002年当社設立、代表取締役就任。2009年JVA中小企業庁長官表彰起業家部門受賞。

【株式会社ミトラ】
設 立 :2002年10月10日
資本金 :12,000千円
所在地 :香川県高松市林町2217-15 香川産業頭脳化センター
事業内容:産婦人科医療ITシステムの開発・企画・コンサルティング
http://www.mitla.co.jp/


産婦人科のIT化を進め、過疎地や海外での遠隔医療システムにも取り組む
四国の産学官による医療プロジェクトから生まれた起業家


―産婦人科に特化した周産期電子カルテシステム「ハローベイビープログラム」を開発販売されています
妊婦健診などの診療情報登録や、プレグノグラム(妊娠経過図)やパルトグラム(分娩進行状況)など、一般の総合電子カルテとは違う、産婦人科特有の診療情報をシステム化した電子カルテです。

―産婦人科電子カルテではシェアトップです
競合先は大手企業です。産婦人科における電子カルテ普及率はまだ20%ほどで、これからも市場は伸びていきます。私どもの強みは周産期データを活用したシステムにあり、既導入の総合電子カルテ端末にも対応できます。

―電子カルテのクラウドシステム化を進めています
大手医療施設への平均受注金額はパッケージとセミオーダー開発で3000万円です。今後は個人の産婦人科病院を開拓するために月額課金モデルのクラウドシステムを開発しています。医療機関に対する規制緩和が検討されていますが、個人情報の取扱いが課題です。

―産婦人科医の不足が深刻化している中、遠隔医療システムの活用が望まれています
医師総数は30万人近くに増えていますが、産婦人科医師数はここ数年間1万人と変わりません。分娩施設や対応医師が不足している地域もあり、周産医療IT多様化や電子母子健康手帳の運用を国全体としてもバックアップし始めています。

―地域医療の情報連携システム開発に取り組んでいます
岩手県では周産期地域医療連携ネットワーク「いーはとーぶ」を手掛けました。市町村や医療機関が、妊娠から出産までの相談や医療提供のため、健診データを登録し活用する情報システムです。岩手県遠野市では妊婦健診を助産師が行い、県立釜石病院の医師が遠隔でサポートしています。

―在宅で妊産婦と胎児の健康情報が管理できるシステムです
妊産婦の自宅から電気通信網を用いて、胎児の心拍数や母体陣痛を送信でき、医師はインターネット回線や携帯電話等で診断することが、胎児心拍数計測器「モバイルCTGモニタ」によって可能になりました。

―起業のきっかけは、経済産業省の地域医療に関するプロジェクトからです
四国経済産業局の上林匡さんから紹介された香川大学原量宏教授の周産期システムを見て、地域医療システムを大きく変え、多くの命を育てる事ができると思いました。それまでは鉄鋼関係のITシステムに関わってきましたが、この人たちとの出会いがなければ、会社設立も「ハローベイビープログラム」も誕生もありませんでした。

―海外展開もスタートされています
海外では医師不足から新生児の死亡率が日本の100倍以上になる地域もあります。遠隔地で診断できる産婦人科システムのニーズは高く、2012年にピサノローク(タイ)でのテスト運用を始め、2013年にはラオスで運用をしています。平成27年度はインドネシアでも導入検討され、南アフリカのJICA案件化調査事業をおこないます。

※「THE INDEPENDENTS」2015年6月号 - p4-5より一部抜粋