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「目指すは「脱お茶専業」 <br><br>お茶離れ時代に、先手先手で<br><br>新しい分野を戦略的に切り拓く」

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株式会社小柳津清一商店
代表取締役 小柳津 正男さん

1952年静岡県静岡市生まれ。国立滋賀大学卒業後、静岡銀行勤務を経て、1年間の茶問屋での修行の後、1977年当社入社。株式会社小柳津清一商店 代表取締役。

住所:静岡県静岡市駿河区向敷地1198-1 TEL:054-259-6775
設立:1951年2月  資本金:4,000万円 従業員数:73名(07/9現在)
http://www.oyaizu.co.jp/

―御社の特徴を教えてください
商品の品質について言うと、お茶処・静岡の中でも良質な産地として有名な本山・川根の契約茶園で栽培された新茶を、仕入れ後即-60℃で保存しています(一般的には-15℃程度)。劣化のスピードが格段に違います。-60℃の冷凍保存をしているのは当社だけでしょう。また、通常は熱風で乾燥させるところを、当社ではマイクロウェーブ乾燥を行っています。熱風乾燥では、せっかくの味や香りが飛ばされてしまいます。電子レンジ方式で茶葉の内部から水分を取ると、品質低下を招くことなく仕上げる事が可能です。保守的といわれる製茶業界において、他社に先駆けて最新鋭設備を導入し、品質を損なうことなく効率化・合理化をはかっています。機械に頼るだけでなく、経験や技術、勘やコツも総動員して品質向上に努めています。モンドセレクションで4年連続最高金賞受賞、仕上技術協議会で静岡県知事賞など毎年味と技術を評価されているのもその証と言えます。これらの結果として、お茶処静岡の中でも上位のポジションを確立しています。

―最近はお茶離れが進んでいますが?
たしかに、製茶業界は縮小の一途をたどっています。本来、リーフ(葉)が最もおいしく、ティーバッグ、粉末茶、ペットボトルの順に味が落ちるのですが、時代は簡便性を求めているので、味が悪くても便利なお茶が飲まれるようになってきています。この先に起こることは、消費者がお茶というものを飲まなくなる可能性があるということです。当社はよく「お茶屋さんっぽくないね」と言われます。それは、常に市場の先を見ながら、販売方法やターゲット、別の市場まで含めて考えて、新しいことに取り組んでいるからだと思います。業界にどっぷり浸かって同じやり方を繰り返していても、消費者から買ってもらえないことには意味がないですからね。市場がなくなることはなくても、市場の変化に機敏に対応していく事が重要だと思っています。お茶を扱う会社なのですが、私の意識としては「脱お茶専業」です。

―お茶以外の分野の展開はどのようにお考えですか?
だから、お茶以外の分野も始めています。例えば、「雅正庵」というお菓子と喫茶をメインとする店舗を4店舗展開しています。お茶だと店に飼いに来るのは月1回のところ、お菓子なら月2?3回は足を運んでくれる、そのうち1回はお茶を買ってくれればいいという発想でスタートしました。そこでリピート率を上げていけば、相乗効果で売れるという戦略です。お菓子にも当社のお茶を使っていて、オリジナル菓子の「鞠福」もモンドセレクション金賞を受賞しています。現在は売上の9割がお茶ですが、お茶以外も事業として注力し比率を上げていかなければと思っています。もちろんお茶に関しても、まだまだ増やすための取り組みをしていきますけどね。

―製茶部門の目標はありますか?
お茶に関しては、まずスーパー・百貨店向けで全国ナンバー3以内を目指しています。当然1位を目指すべきですが、最低でも3位以内に入らなければ、淘汰されてしまうと思うのです。3位以内に入れないのならスーパー部門は撤退するくらいの覚悟で取り組んでいます。決してお茶の取扱を減らすというのではなく、細分化したターゲットに向けて、それぞれ取引量を上げる戦略で、むしろ増やしていくのです。意識としては、それぞれの帳合で1位を目指す。そうすれば、おのずとスーパー全体で3位には入ってくるはずです。「全国で3位になるために、各帳合で取引高1位になる」と目標を掲げると、営業マンの考え方が好転してきました。

―プロセスマネジメント大学を受講したご感想は?
会社の組織化を図るための良い手法がないか探していたところ、プロセスマネジメントの手法をDMで知りました。受けてみて、営業戦略が論理的なろころがすごく良かったですね。最初は私一人が申し込んで、1回目を受けこれは一人だけじゃなく複数で取り組んだ方が良いと感じたので、営業部門の責任者2名も一緒に受けました。うちは部門も複数あり、それぞれ戦略が違うから、学んだ項目の適用方法も違うんですよね。現場担当者に実際に学んだ事を活用して、当社流の営業スタイルを確立してほしいと思い、さらに3名追加しまして、会社全体でプロセスマネジメントを実践していこうと取り組んでいる最中です。確立された良い手法だと思っています。

―今後どんな会社にしたいですか?
とにかく伸びている会社であり続けたいですね。そうじゃないと社員も仕事をしていて楽しくないですから。そのために、今までにない形のものを取り入れていかなければならないのです。既存事業であるギフト、量販もしっかり守りながら、新しい分野を開拓し、お茶を使ったビジネスシステムを提供していきたいです。商品はもちろん、新しい販売方法、ターゲットなど、同業他社とは違うことに常に取り組んでいくのが大切だと考えています。


推薦者のコメント(株式会社チェンジマスターズ 法貴 礼子) 小柳津社長は、柔和でにこやかな表情をしていらっしゃいますが、常に先を見つめる鋭い感覚を持っている経営者だと改めて感じました。営業のやり方も、これまで培ってきたものをベースにプロセスマネジメントの戦略を加味して、プル型とプッシュ型を融合させた「小柳津流」ができるのではないでしょうか。地元でも期待のユニークな企業です。


※全文は「THE INDEPENDENTS」2011年1月号 - p36-37にてご覧いただけます