「「アベノミクス成長戦略とわが国のベンチャー投資環境」」
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一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 会長
アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 代表取締役会長
尾崎 一法 氏 Kazunori Ozaki
1949年8月2日生。浦和高校出身。上智大学経済学部卒。石川島播磨重工業(現IHI)を経て、1984年日本合同ファイナンス(現ジャフコ)へ入社。取締役国際営業部長、取締役事業投資部長を歴任する。1998年から日本国内で本格的なマネージメントバイアウト投資を行う。1999年、上級副社長としてGEキャピタルへ参画。GEの日本における本格的なプライベートエクイティ投資事業の立ち上げを行う。2001年4月アントファクトリージャパン(現アント・キャピタル・パートナーズ)代表取締役就任(現任)。2004年日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)理事就任、2011年7月より同協会副会長、2014年7月より同協会会長。2005年より日本プライベート・エクイティ協会理事。2014年1月よりインデペンデンツクラブ理事。
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~見えてきたベンチャー・キャピタル、再生へのシナリオ~
―日本再興戦略とベンチャー施策-内閣府資料より
アベノミクス「3本の矢」で日本経済はあらゆる面で上昇局面となりましたが、日本経済を持続的な経済成長軌道に乗せるためには、成長戦略の進化による更なる構造改革が必要不可欠です。日本再興戦略では、「金融・資本市場の活性化(貯蓄から投資へ)」が基本戦略の一つに挙げられ、改訂版での残された10の重要な課題には、「ベンチャー・創業の加速化」があります。現在はそこに、「地域活性化と地域経済構造改革」が加わりました。
(1)ベンチャー・創業の加速化に関するこれまでの主な取組
「租税特別措置法による民間企業等によるベンチャー投資を促す税制」の創設、「金融商品取引法の改正 (投資型クラウドファンディングの利用促進等)」、「エンジェル税制の運用改善(申請様式の改正による手続き負担の軽減)」など産業競争力強化法が制定され関連する制度ができました。
(2)新たに講じる施策
ベンチャー企業と大企業のマッチングを促すため「ベンチャー創造協議会」が創設されました。また官公需法を見直し、創業間もない「中小ベンチャー企業の政府調達への参入促進」、創業に伴う生活の不安定化の懸念の解消(求職活動中に創業の準備・検討を行う者に対する雇用保険給付の取扱の明確化)が検討されています。
(3)地域活性化と地域経済構造改革
内閣府官房資料では、地域経済活性化の施策アイデアが提示されています。
①貸出先の海外支援のためのプラットフォームづくり
②地域における再投資の仕組みづくり(マッチングファンド等)
③地域企業の再生局面における再生支援・経営支援強化(地域経済活性化支援機構=REVICの活用)
④地域金融機関(地銀・信金・信金)の目利き能力の向上等の機能強化
⑤地域の生活を支えるサービスを提供する法人に対する資金面での支援
―ベンチャー・キャピタル、再生へのシナリオ
リーマンショックで大打撃を受けたベンチャー・キャピタル業界も回復基調にあり新たな時代を迎えています。JVCAの新体制では以下の認識および支援体制を構築していきます。
(1)ベンチャー・キャピタル業務の研修制度の拡張・強化
VCの原点に立ち返り、起業家を発掘し、その起業を助け共に汗をかきリスクを分かち合い、共に成長する経験をしっかりと積み直し、VC投資業務の本来のスキルセットを再構築する。
(2)独立系ベンチャー・キャピタルへの支援強化
スタートアップ企業への投資経験から優れた起業家と事業計画を選別する力、ビジネスモデルの可能性の判断力、必ずくぐらなければならない段階的経営危機に際して、投資先を支援し導く経営支援力など、損失を出さない、結果(投資収益)を出せるVCとVCファンドを増やすためには、組織型ではなくパートナーシップ型の独立系ベンチャー・キャピタルへの支援強化が必要。
■ベンチャー・キャピタル新潮流(インキュベイトファンド代表パートナー村田祐介)
2013年から2014年直近までにおいて、計37社のVCにより総額2,581億円のファンドが新設された。注目すべきはGPの割合。リーマンショック以前では金融機関系VCが過半を占めていたが、独立系VCが新たな担い手として浮上してきている。1社あたり投資金額10億円以上の事例が増加、資金調達が大型化している。
(3)大企業とベンチャー企業のマッチング推進、その中心的役割をVCが担う
スタートアップ投資は、景気動向に左右されるIPO依存を脱し、トレードセールスによるEXIT戦略による回収を前提にする必要がある。スタートアップ投資を確実に回収していくために、投資初期段階から創業者との合意を前提とした売却候補先の選別および事業計画を策定し、大企業との戦略的提携を推進していく。
(4)国の施策に関与・協力し、関連法案、諸制度の改革改善に提言、要請する
スタートアップ企業投資ファンドの中心的投資家となるべきエンジェル投資家層の構築と育成、その一助としてのエンジェル税制や企業版エンジェル税制(ベンチャー投資促進税制)の改善、整備と普及への取組、推進をしていく。
■ エンジェル投資家の裏側教えます(シリコンバレーのスーパーエンジェル投資家ロン・コンウェイ)
投資金額は5万ドルから20万ドル程度まで、外れても恨みっこ無し。投資判断基準は、起業家の資質が最も大切で、情熱を持っているかを直感的に判断する。投資家には2から3倍のリターンがだせれば立派。出来るだけ起業家が仕事をしやすい関係性を優先するので、投資先の取締役にはならないし、経営に対して無理な指示もしない。(Brandon K Hill)
5.地方で活躍する独立系VCを増やし相互協力をネットワーク化する
日本の優れたサービス事業とモノ作りを組み合わせた事業を、日本全国の各地方から海外に展開するために、東京一極集中から脱却し、国家的地域経済再生政策と呼応して地元経済圏との密接なエコシステムの中心的存在として地方でVC活動を展開する。
■ 地域に向かう資金を活用する
農山漁村地域の活性化を目指し、農林漁業(1次産業)、製造業(2次産業)、小売業等(3次産業)の総合的・一体的な取組(6次産業)に出資する民間との共同出資によるサブファンドは、約1年間(平成26年3月24日時点)で、全国に41件設立(総額約666億円)されている。
■ 地域を支援する資金とネットワークを活用する
クールジャパン機構(平成25年11月設立)は、海外需要獲得の基盤となる「プラットフォーム」(拠点)や「サプライチェーン」(流通網)の整備等にリスクマネーを供給する。これにより、地域企業、クリエイター、デザイナー等の高付加価値ビジネスを支援している。
2014年11月10日東京インデペンデンツクラブ 基調講演より