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「「資本政策」について(3)」

公開


【小原 靖明】
1985年明治大学大学院法学研究科修了。
1989年当社入社。
2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。
2007年合併に伴い、当社取締役就任。
2012年3月常務取締役就任。
2014年3月専務取締役就任。

【株式会社AGSコンサルティング】
住所:東京都中央区日本橋室町1-7-1 スルガビル 7F
TEL:03-6803-6710
設立:1988年
スタッフ数:211名(公認会計士45名、税理士53名)
事業内容:MS(マネジメント・サービス)、IPO支援、M&A、事業承継 ほか
http://www.agsc.co.jp/


今回は、資本政策の具体的手法を整理するとともに、近時、会社法や金融証券取引法などが改正されたことにより活発となってきた種類株式の活用やクラウドファンディングについても触れて資本政策についての項を終えたいと思います。

1.資本政策の具体的手法
資本政策は実施の目的や会社の状況によって様々な手法を選択することが可能です。したがってそれぞれの目的に沿った個別的手法を検討しなければなりません。

■第三者割当増資(主な目的…資金調達・株主構成の変更)
特定の第三者に株主を割り当てる増資であり、その結果として株主構成に変更が生じ、特定の株主の持株比率があがることになる。 ■株主割当増資(主な目的…資金調達)
既存株主に対して持株比率に応じて平等に株式を割当てる増資であり、現状の株主構成(比)を変えず資金調達を行う手法、既存株主に資金的余力があり、かつ株主全員の同意がとれることが前提。
■新株予約権(主な目的…役職員等に対するインセンティブプラン)
あらかじめ定められた価格で株式を購入することができる権利を付与する制度であり、役職員に対するインセンティブを与えるものである。しかしながら権利行使が行われると、発行済株式数が増加するため一株当たりの価値が希薄化するリスクもあるのでその点も考慮する必要がある。
■新株予約権付社債(主な目的…資金調達)
新株予約権が付された社債であり、予約権を行使されない限り株主構成を変更することなく経営権を維持して資金調達ができるのがメリットである。しかし、権利行使された場合は、株主構成比に変更が生じるとともに一株当たりの価値が希薄化するリスクがある。

資本政策の具体的手法としては、これらの他に株主構成の変更を目的として「株主移動」、株式数の増加を目的として「株式分割」、株式数の減少を目的として「株式併合」があります。

2.資本政策におけるトピックス
(ア)種類株式の活用
種類株式とは、簡潔に言うと主に(ア)剰余金の配当を受ける権利、(イ)残余財産の分配を受ける権利、(ウ)株主総会における議決権について、普通株式とは異なる権利、内容も持つ株式のことです。本年3月ロボットスーツを開発したサイバーダイン社が「議決権種類株式」を用いて、日本で初の上場を果たしました。サイバーダイン社の創業社長の上場後における保有割合は、発行済株式総数ベースでは43%に留まっていましたが、種類株式を活用することにより、議決権ベースでは88%を確保しました。経営権の維持と資金調達に苦労を極めるベンチャー企業にとっては大いに参考になる事例だと思われます。この種類株式については、今後様々な観点から研究が進められ活用されることが望まれます。

(イ)クラウドファンディングの活用
10月の事業計画発表会で、(株)鯖や右田社長がクラウドファンディングで資金調達を行いながら出店を進めたことを発表され、これが普及してきたことを実感しました。
クラウドファンディングとは一般に「新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組」とされ、資金提供者に対するリターンの形態により①投資型、②寄付型、③購入型に区分されます。 日本においては、クラウドファンディングの活用は緒についたばかりで、金融商品取引法の規制を受ける投資型の例は少なく、まだ寄付型や購入型で進められており、資本政策におけるインパクトはこれからだと思います。しかしながら、米国の例や法整備も急速に進んでいることから、今後の活用が期待されるところです。

※「THE INDEPENDENTS」2014年11月号より