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「「日本介護福祉グループ 藤田英明」」

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大阪大学大学院医学系研究科
臨床遺伝子治療学 教授
森下 竜一 氏
1962年5月12日生まれ。1983年私立武蔵高等学校卒業。1987年大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学循環器科研究員、大阪大学助教授大学院医学系研究科遺伝子治療学を経て、2003年より大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授(現職)。1999年メドジーン(現・アンジェスMG)創業、2002年9月東証マザーズ上場(4563)。内閣府規制改革会議委員。内閣官房健康・医療戦略室戦略参与。大阪府・市 特別参与。

株式会社日本介護福祉グループ
代表取締役会長
藤田 英明 氏
1975年11月 東京都江東区生まれ。1998年03月 明治学院大学社会学部 卒業後、社会福祉施設の現場業務、管理運営業務、経営等に従事。2005年05月 有限会社 フジタ・エージェント設立。2009年08月 株式会社日本介護福祉グループに社名変更


― 高齢化社会を迎えながら、一方で介護施設は不足しています
【藤田】デイサービス「茶話本舗」を全国約800事業所展開していますが、都市部はまだまだ不足しています。ところが2015年の介護保険制度改正によって小規模デイサービスの開所が規制されます。
【森下】介護難民400万人の受け皿としてデイサービスやケアハウス(認知症ハウス)の整備は必要です。しかし国としては介護費の総額は増やせない。結果、民間企業に負担をかける形になっています。
【藤田】要介護者の80%は認知症です。徘徊者の監督責任問題など家族の負荷も増えています。
【森下】高齢化のスピードが早過ぎて国の政策が追いつけていないのが現状です。

―介護職場で働く人も不足しています
【森下】介護場で働く人の離職率は問題です。資格者はいるのに介護現場には出てきません。
【藤田】高齢者だけが働くデイサービスを江戸川区で開業します。週2日で構わないと言ったら、沢山の応募がきています。
【森下】日本では介護職の派遣業務が開放されていない問題もあります。

―森下さんは内閣府の規制改革委員です
【森下】健康・医療戦略のワーキンググループ座長として、直接現場から情報収集に注力しています。
【藤田】介護保険を受けている時間帯は、診療報酬の医療サービスが受けられないなど非効率です。
【森下】医療介護の一気通貫的なサービスが必要だと思います。
【藤田】特別養護老人ホームの株式会社化等が認められ、混合サービスの充実が図られるべきです。
【森下】社会福祉法人など非営利法人のHD化による介護医療の分担連携は検討課題です。
【藤田】一晩800円のお泊りデイサービスが旅館業法上問題だとする自治体がありました。
【森下】市町村レベルで法の解釈が違う事もあります。医療機関の健康食品販売が禁止されているという誤解もありました。ともかく疑問点や意見を規制改革委員会のホットラインに連絡してください。規制は、複雑で国も把握できていない事でもどんどん改革していきます。

―テクノロジーの進歩はどのように影響しますか
【藤田】介護ロボット系に期待しています。ただ介護現場では肉体的負荷より精神的負荷の軽減が求められています。
【森下】パワーアシスト系ロボットも重要ですが、検診、介護、医療というビッグデータの分析活用に期待しています。
【藤田】あと2~3年もすれば、見守りロボットが血圧や脈のデータを送信によって遠隔から健康状態を把握できるでしょう。そうなれば効率化が進み、介護現場の負荷も大きく軽減されます。

―高齢化に向けて一人ひとりができる事は何でしょうか
【森下】50歳から認知症例が急激に増えます。原因となるのは、高血圧、糖尿病、高脂血症、煙草です。つまり生活習慣病の予防が大切です。
【藤田】それには食事と運動が有効です。そして早期発見です。私どもが取り組む認知症予防センターは、月5000円で使い放題で利用できるように設計しています。弊社デイサービスセンターの最年少利用者は40歳台です。
【森下】早期治療に向けた医薬品・ワクチン開発などサイエンス分野の開発認可には20年かかりますので、まずは予防です。
【藤田】働くこともいい。認知症は定年後から急激に増えます。
【森下】麻雀など手先とか頭を使う事もいい事です。
【藤田】私どものセンターには麻雀はもちろん、囲碁、将棋も設置します。薬膳料理も用意しています。

―超高齢化社会の問題を解消するにはどうしたらよいでしょうか
【森下】国民皆保険の日本は世界で最も成功している福祉国家です。しかし2025年に人口が1億人までに減ると社会システム破綻の可能性があります。日本全体で人口減少への歯止めを考える必要があります。
【藤田】地方の人口減問題は介護にも地域格差を生じさせます。群馬県みなかみ町では、東京から高齢者を呼び寄せ介護施設の効率化を検討しています。
【森下】団塊世代による急激な高齢化を平準化させる事です。高度成長期の小学校と同じで、ピーク後は病院も医者も余ります。
【藤田】私たちのデイサービス施設は古民家を活用しています。2040年には大型の補助金を利用した介護施設の多くは無駄な箱になります。
【森下】経済活性化と出生率上昇が最重要課題です。そのためにはまず社会システムのイノベーションが必要です。テクノロジーのイノベーションはもちろん重要ですが、それだけでは問題は解決しません。
【藤田】介護の効率化と充実を同時に実現させ、日本が世界で初めて経験する超高齢化社会の処方箋を世界に示す必要があると思っています。

※「THE INDEPENDENTS」2014年11月号 - p12より