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「世界に通用する技術ベンチャー一体改革」

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インデペンデンツクラブ会長

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。
日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。
2012年3月教授を退官

2013年以降、多様な官民ファンドが組成されています。中小企業基盤整備機構のマッチングファンドは国内ベンチャーファンド5,000億円の約半分に出資しています。産業革新機構は10年で1兆円の投資資金を残していますが、革新的技術の開拓力強化に民間VCへのファンド・トゥ・ファンドも検討すべきでしょう。民間資金等活用事業推進機構では、これから迎えるインバウンド時代に向けた道路・上下水道・飛行場などのインフラ整備に投資をしていきます。コンテンツの知財面に課題は残りますが、クールジャパン機構の取り組みにも期待をしています。

大学発ベンチャーは、2001年の平沼プランによる1000社構想で以って、現在約2000社にまで急増しました。清算または譲渡してなくなった会社は1割だそうですが、息をしているだけの企業も少なくありません。最低限のセーフティネット構築含めて廃業促進にもきちんと取り組み、新しいチャレンジが起きる環境整備が求められています。

大学の知財活用を特許保有件数及び特許実施等収入でみると、特許1件あたりの収入は実に17.7万円しかありません。助成金等で国がかけたコストに対して大きなマイナスです。特許の事業化における大きな課題としては、その大学に特許はじめ研究の集積がされていないことが挙げられます。各機関で開発された周辺特許の集約・パッケージ化をおこない、戦略的に知財の有効活用を推進すべきです。

■ 文部科学省・科学技術振興機構(JST)
・大学発新産業創出拠点プロジェクト(START):ベンチャー育成のプロであるキャピタリストがプロモーターとして選定され、出口戦略策定や大企業との橋渡しに伴走します。採択された事業を進捗状況等を含め毎年外部委員会によりチェックを受けます。
・国立大学の研究成果に対する事業化投資解禁(2014年):東大・京大・阪大・東北大の4大学に1000億円の投資予算が配分され、大学発ベンチャーに対する投資がおこなわれていきます。
・JSTによる出資:改正研究開発力強化法に基づき、JSTの研究開発成果に対して金銭又は現物による出資が可能になりました。単独の大学では活用ハードルの高い分野においても、JSTが重要知財を集約し、パッケージ化を推進する知財活用支援事業も展開されます。
・拡大版イノベーションJAPAN:NEDOとJSTによる産学連携のためのマッチングイベントが2014年9月に開催されます。大学発ベンチャーに特化した表彰制度も初めておこなわれます。

大学を取り巻くベンチャーの環境条件がここにきて急速に変化しています。大学発ベンチャーを支援する最初のファンドができたここ北海道において、この話ができたことを嬉しく思います。世界展開する大学発ベンチャー支援に、皆さまからもお力添えください。

2014年6月10日北海道インデペンデンツクラブ 第一部基調講演より