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「[事業計画発表会100回記念] パネルディスカッション」

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パネルディスカッションレポート
「世界にはばたくグローバルベンチャー」
村井 勝 氏(一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ 代表理事)
齋藤 ウィリアム 浩幸 氏(株式会社インテカー 代表取締役)
朴 栄光 氏(イービーエム株式会社 代表取締役)
モデレータ:松田 修一 氏(早稲田大学 名誉教授 商学博士)


松田:日本と世界との橋渡しができる実績豊富なメンバーを迎えて、「世界にはばたくグローバルベンチャー」をテーマに議論したい。

村井:TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)とは、日本有数の大学機関や、数多くの研究施設が集積するつくばエクスプレス沿線を中心に、起業家支援をおこなっている。日本の先端技術は欧米と比較しても遜色はなく、特に環境・エネルギーやインフラ分野においては突出して優れている。課題は労働人口比で起業家志望が世界の最低水準にあることだ。TEPでは起業家を育てるように心掛けている。これから新しく成長するアジア市場において、日本の先端技術は非常に有益なエレメントになる可能性を秘めている。TEPでは特に海外展開支援に力を入れており、昨年だけでも支援先5社が海外拠点を構築した。

齋藤:日本企業がきっかけでアントレプレナーの道を歩み出し、そして様々な日本企業のお世話になって成功することができた。だから、その恩返しとして、次世代のアントレプレナーを育てる様々な活動をおこなっている。十数社に対するベンチャーキャピタル投資やボードメンバーとしての参画、大学でのアントレプレナー育成の教育、政府の諮問会議等ではイノベーションが起こりやすい環境作りの提言、審査員としてEOYにも出席している。何が正解か分からないこの世の中では、とにかく失敗を恐れずトライすることが大事。私自身その実践として、いろいろと発信させていただいているが、その根底にあるのはやはり日本再生のためにアントレプレナーを支援したいというPassion(パッション)だ。

朴:「冠動脈バイパス手術」の訓練装置を製造販売している。日本で新しい事業にチャレンジするには戦略が重要。当社ではミッション「KUROFUNE」として、まずアメリカで認めてもらい、それを逆輸入して日本の医師達に広めようと考えた。26歳の時、単身米国に乗り込み、四六時中医師に付いて回って手術を観察し、自社商品の有益性を再認識した。これを商品に反映し、今では世界で一番大きな医療機関であるテキサスメディカルセンターに導入されている。結論を言えば「KUROFUNE」は成功し、アメリカで奮闘していることを話すと、日本でも皆応援してくれるようになった。ただ装置を販売するのではなく、いかに使いたくなる環境を作るか、人をどう巻き込むか、ベンチャー企業として泥臭くトライしている。

松田:グローバル社会の中、今後も日本は活力を出し続けることはできるのだろうか
齋藤:東南アジアや中東、アフリカの方々と議論して、日本人で良かったなと思うのは、科学技術面では負けないということ。日本の一番の資源は頭脳である。ただ、R&Dの”D”の部分に弱い。グローバルニーズに合わせて商品をどう変えていくかをもっと考えることが大事。

松田:海外においては、ベンチャー企業の商品を使ってみようという感覚に差はあるか
朴:中国は「メイドインジャパン」と言えばかなり興味を持ってもらえる。米国の場合、きちんと機能を説明し、それが本質的に良い商品であれば受け入れてくれる。何よりメイドインジャパンブランドに必要なのは、アントレプレナーとしてのビジョンをきちんと示し、日本のものづくりをストーリーとして説明すること。ビジョンを話すと、米国ではチームができる。一緒にパイを大きくしようとできるのが米国、日本はパイを喰い合ってしまう。

松田:グローバルに活躍できる人材とそうでない人材の相違点は
村井:会社との関係性に対する考え方が大きく異なる。日本人は会社に育ててもらいたい人が多いが、米国では会社と人材は対等であり、それぞれお互いが何を提供し合えるかを考える。また、変化に対する姿勢も違う。日本人は変化を避ける、チャレンジしない、問題を認識しながらも行動しない。そういう姿勢が日本を閉塞感のあるものにしてしまっている。

質問:日本で事業を固めてから海外に出るべきという話に対して、お考えを聞きたい
齋藤:これからグローバル、ではなく既にグローバルである。起業して、まず日本で一定の成功を収めてから海外に!という考えではなく、マーケットの大きな海外での成功を初めから考えて起業すべき。その意味で即日海外に打って出るべき。世界から見て1.7%の人口しかいない日本国内で苦労して事業を育てる理由はない。ビジネスモデルも海外マーケットで検証する方が賢明である。

松田:世界に対して垣根を持たない若者が増えてきつつあり、1990年代の第二次ベンチャーブームとは異なる雰囲気を感じている。ここにいる方々の支援を上手く仰ぎながら、世界で活躍する起業家が生まれてくることを期待したい。