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「ネットを活用したビジネスモデルのコンプライアンスに留意!」

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弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士 伊藤 雅浩 氏

1996年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士前期課程修了後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)入社、業務改革・情報システム開発プロジェクトに従事。2000年06月スカイライトコンサルティング株式会社設立に参画、主に情報システム企画・導入プロジェクトに従事。2007年03月一橋大学法科大学院卒業。2007年09月司法試験合格/11月 司法研修所入所(新61期)。2008年12月弁護士登録。2009年01月内田・鮫島法律事務所入所。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】 http://www.uslf.jp/

2009年10月に,オンラインで購入した雑誌をブラウザ上で閲覧できるというサービス(図)がスタートし,注目を浴びました。

 ユーザにとってみれば,書店に出向かなくとも購入したその瞬間から雑誌が読め,場所を気にせずバックナンバーを長期間保存できるうえ,記事の検索もできるなど,このサービスには多くのメリットがありました。また,追加の手数料を支払えば,現物の雑誌を届けてもらうこともできました。

 しかし,著作権者の許可なく著作物を複製し,ネットで配信することは著作権侵害になります(著作権法21条,23条1項)。サービス開始当初から,日本雑誌協会等が著作権侵害行為であると抗議した結果,わずか1週間ほどでサービスを休止し,その5カ月後には正式に終了となりました。

 また,昨年は,ペニーオークション(入札ごとに低額の手数料を支払って落札する方式のオークション)と呼ばれる形式のネットオークションが流行しました。ユーザに対しては,低額の入札価格で人気商品を落札できる可能性があるという魅力がありました。

 しかし,手数料を支払って入札しても落札できないという苦情が相次ぎ,2010年12月には消費者庁が注意喚起をした結果,多くのペニーオークションサイトが閉鎖されました。また,2011年3月には,消費者に対して商品が著しく安く手に入ると誤認させる表示をしたとして,景品表示法に基づく排除命令も出されました。当時,私が相談を受けた類似のケースでは,刑法上の賭博罪にも当たる可能性の強いサービスもありました。

 つい最近では,Androidアプリ「カレログ」の問題も起きています。このように,ITビジネスは,著作権法,景品表示法のほか,さまざまな法律問題が発生するケースが多いと思います。もちろん,ITに関係のないビジネスにおいても法律問題は発生しますが,IT関連ビジネスの場合は,どうしてもスピード重視であり,かつ,現実に短期間で立ち上げることができるため,こうした問題がお座なりになってしまいがちです。

 上記に挙げた例は,おそらく投下した資金の回収に至る前にサービスを中止,変更せざるを得なかったケースでしょう。いずれの例も,適法に実施する方法はあり得たため(それが収益的に見合うかどうかは別の検討が必要ですが),事前のコンプライアンスチェックを強化しておきたかったところです。

【コラム】弁護士の役割
 弁護士が「これは○○法に違反する可能性がありますね」などと発言するだけでは,起業家にとって「では,どうすれば?」ということになってしまいます。弁護士の提供するリーガルサービスには,適法性の判断だけにとどまらず,どう修正すれば,サービスの魅力を維持したままクリアランスを高められるかというコンサルティング要素も含まれるでしょう。もちろん,これは弁護士が一方的に見解を述べるという性質のものではなく,起業家とのディスカッションを通じて,よりよいサービスが生まれる可能性があります。

当事務所では,ビジネスや技術の経験を有する弁護士を揃えることによって,起業家の目線に近いサービスを提供しています。ぜひともお試しください。

[内田・鮫島法律事務所] http://www.uslf.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2012年1月号 - p15より