助産師が持っている知識や経験には、もっと大きな価値がある
「お産が好き」だからこそ見えた、助産師の価値
私ももともと助産師であり、大学卒業後は総合病院で助産師として5年勤務していました。
一方で、現場にいるほど、助産師の知識や経験はお産の場だけで使われるものではないと感じるようになりました。もっともっと助産師をはじめとした専門職の価値をあげていかなければ、と考え始めたのもこの頃です。
だったら、その価値がきちんと評価される仕組みを自分でつくろうと、2023年にjosanshiを創業しました。
「思い」だけでは続かない。3年で売上1億円超へ
最初にやったのは、事業を大きくすることではなく、仲間を増やすことでした。
「じょさんしnavi」「じょさんしcampus」「じょさんしcareer」と、一つずつサービスをつくりました。情報を届け、学びを支え、働き方や人生の岐路にも向き合う。単に登録者を集めるのではなく、助産師との関係をつくることを大事にしてきました。

現在、サービス群の総利用ユーザーは2万8,000人。全国の助産師の約半数に接点を持つ日本最大級のネットワークになりました。広告費をかければ明日つくれるものではありません。3年間、一人ひとりとの接点を積み重ねた結果、スクール、人材紹介、マーケティングなどで売上1億円超まで来ました。
そして、助産師を応援したいという思いだけではなく、専門職に価値を還元しながら、持続する事業として成立させることを考え、次はもっと大きな市場に挑戦したいと思いました。

AI時代だからこそ、「誰が言うか」が価値になる
2026年7月に専門職参加型マーケティングプラットフォーム「Coepo(コエポ)」を立ち上げました。
今はAIに聞けば、商品の成分も特徴も比較もすぐ分かる。それでも最後にママに聞かれるのは「助産師さんは、この製品どう思いますか?」です。
情報が足りないのではなく、多すぎるからこそ、「何を言うか」以上に「誰が言うか」が価値になる。AI時代の最後の差別化は「人の信頼」だと思っています。
Coepoでは、企業の商品を専門職が学び、体験し、声を返します。それを商品開発や市場分析、広告・販促に生かし、納得した専門職から生活者への自然な紹介にもつなげます。
「広告を止めれば売上も止まる」のではなく、「信頼が積み上がるほど売れやすくなる」構造をつくりたいと思います。

売るのは「回答」ではなく、専門職の「信頼」
収益モデルは、企業にクレジットを購入いただき、アンケート回答、セミナー視聴、サンプル体験など、専門職が実際に行動した分だけ費用が発生し、一部を専門職へ還元します。
さらに、企画、制作、配信、分析、改善、販促まで自社で行います。私たちが売っているのは「助産師の回答」ではありません。専門職の知見を企業のマーケティング資産へ変える仕組みです。
開始約1カ月で2,100人超が登録し、1,200人以上から9,600件を超える回答が集まりました。企業案件も実際に動き、分析から販促までつながり始めています。
企業営業はこれからなので、ここは課題です。自社ですべてを抱えず、販売パートナーなどとのアライアンスも積極的につくりたいと思っています。

「専門職の信頼を社会に流通させる会社」を目指す
Coepo単体で3年後に売上約10億円を目指します。ただ、助産師市場だけで10億円をつくるつもりはありません。まず助産師で型をつくり、次は看護師、薬剤師、管理栄養士へ。商材もマタニティ・ベビーから食品、化粧品、ヘルスケア、生活用品へ広げます。
そして将来は海外へ。海外の優れた商品を日本の専門職が評価し、日本市場への進出を支援する。「日本に入るなら、まずCoepoに聞こう」と言われる存在を目指します。
助産師が持っている知識や経験には、もっと大きな価値がある。その思いは、起業した時から変わっていません。助産師から始まったこの挑戦を、職種を越え、産業を越え、国境を越える事業へ育てていきたい。そしてその先には、株式上場も視野に入れています。
interviewed by kips 2026.8.10
【株式会社josanshi】
設 立:2023年5月19日
所 在 地:北海道札幌市中央区北五条西十一丁目15-4
資 本 金:2,000千円(株主:柏村沙希)
代 表 者:柏村 沙希
事業内容:助産師向けWebメディア運営、オンラインスクール運営、口コミ・求人サイト運営、Webサイト制作、医療・保健分野向けコンサルティングを展開
従業員数:3名
【代表者略歴】

株式会社josanshi 代表取締役/助産師
柏村 沙希 氏 Kashimura Saki
生年月日:1995年1月21日
出身高校:山形県立米沢興譲館高校
福島県立医科大学看護学部卒業
天使大学大学院助産研究科修了
助産師の専門性と価値が、医療機関の中だけでなく社会のさまざまな場で生かされる仕組みづくりに取り組む。
助産師向け教育事業、人材紹介、専門メディア「じょさんしnavi」などを展開し、2026年には助産師資格者限定アプリ「Coepo」をリリース。企業と助産師をつなぎ、専門職の声を商品開発やマーケティングに生かす新たな市場づくりを進めている。
自身も助産師としての臨床経験を持ち、医療・子育て領域における事業開発や、助産師のキャリア・働き方の選択肢を広げることを目指している。
※「THE INDEPENDENTS」2026年9月号 - P.2-3より