セーバー株式会社 代表取締役 二宮 宏 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

■ 大手半導体企業の無線技術を継承

鮫島:貴社は、メガチップス社からのスピンオフベンチャーとして、映像と無線の双方に強みを持ち、現場のソリューションに落とし込める独自の通信・映像技術を展開されています。

二宮:同社が半導体事業へリソースを集中する中、応用アプリケーション開発部門が円満に独立しました。私たちは長年培ってきた映像エンジンと、新しい無線通信規格「Wi-Fi HaLow(ワイファイ・ヘイロー)」を掛け合わせたソリューションを展開しています。ターゲットは、低遅延映像配信を行う「WebRTC事業」、高回折性の電波を用いた「Wi-Fi HaLow事業」、そしてこれらを組み合わせた重機や自動運転車両の「IoT・遠隔メンテナンス市場」の3つです。直近では、造船所のクレーン遠隔操作・監視システムなどで納入実績を積み上げています。

■ 大企業が真似できない「社会実装」のスピード 

鮫島:貴社の技術的な強みはどこにあるのでしょうか。 

二宮:超低遅延配信(Low-Latency Streaming)とは、映像が視聴者の画面に表示されるまでのタイムラグ(遅延)を極限まで短くする技術です。当社の映像配信技術はモバイル環境下でも80ミリ秒を実現しています。これは時速80〜100キロメートルで走行する自動車をタイムラグなしに遠隔操縦できる基準です。

鮫島:非常に有望な技術ですが、競合が模倣して追随してくるリスクについてはどうお考えですか。 

二宮:映像配信単体では大手も存在しますが、「超低遅延で映像を送りながら、同時に制御データも高精度で伝送する」領域では他社は追いついていません。

鮫島:大企業が社会実装に至る前に、ニッチでも確実にニーズがある市場へ先んじてソリューションを投入したことが、最大の防衛策になっているのですね。

■ 巨大市場を見据えたライセンスモデルの構想 

鮫島:将来大企業が参入しそうな市場では、あえて直接戦わず、あらかじめ特許を押さえて将来的にライセンスで収益化する知財モデルが理想的です。

二宮:先行優位性のための基本特許は出願済みで、追加で2件を準備中です。ただ、開発5名、営業2名という規模の中、圧倒的にリソースが不足しています。 

鮫島:社長1人での実務は大きな負担ですね。今回の資金調達を機に、知財も含めた人的リソースの強化やガバナンス体制の構築を急ぎたいところです。

■ 超低遅延技術を世界標準とするべくグローバル展開を目指す 

二宮:まずは国内の地域インフラや防災、工場プラントで実績を積み、将来的にはドローン連携や海外の鉱山・モビリティ市場へと進出していく計画です。この超低遅延技術を世界標準のモダリティに育て上げるため、スピードを上げて挑戦を続けていきます。

鮫島:今後、大手企業との協業が増えるかと思います。その際、共同研究で生じた知財の取扱いは非常に重要です。

二宮:まさに頭の痛いところです。過去に映像配信の権利を巡って大企業側と争った際、組織力と資金力で権利を押し潰そうとしてくる強い圧力を感じた苦い経験があります。

鮫島:私たちの法律事務所では、まさにその「スタートアップ対大企業」の構図において、スタートアップ側の味方として契約交渉や特許コンサルティングを行っています。本日はありがとうございました。

 

―「THE INDEPENDENTS」2026年7月号 P.12より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
セーバー株式会社 代表取締役 二宮 宏 氏   <話し手>
セーバー株式会社 代表取締役 二宮 宏 氏
(→ イベント登壇情報
 
生年月日:1970年6月2日
出身高校:松山南高校

岡山大学工学部卒業後、日本電気株式会社を経て、1997年株式会社メガチップス入社。
松山ソフトウェア研究所所長に就任。
2003年当社設立、代表取締役就任

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。