<イベントレポート>

2025年11月4日 東京インデペンデンツ
@ Tokyo Innovation Base(TiB)
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/777

 

<特別セッション>

(パネリスト)
(株)ジャパンインベストメントアドバイザー
投資銀行本部 本部長補佐 兼
上場支援事業部長
高根 英彦 氏
  (株)ジャパンインベストメントアドバイザー
投資銀行本部
PEファンド事業部 担当部長
片岡 輝英 氏
  監査法人アヴァンティア
企業価値向上支援室
パートナー CVS室長
梶原 大輔 氏
  (モデレーター)

(株)AGSコンサルティング
顧問
小原 靖明 氏
<特別セッション>  (パネリスト) (株)ジャパンインベストメントアドバイザー 投資銀行本部 本部長補佐 兼 上場支援事業部長 高根 英彦 氏     監査法人アヴァンティア 企業価値向上支援室 パートナー CVS室長 梶原 大輔 氏   (株)AGSコンサルティング 顧問 小原 靖明 氏

■ JIAの成長戦略実行支援事業

高根:JIAグループは、中核事業であるオペレーティング・リース事業で得た利益・キャッシュフローを「成長戦略実行支援事業」などにも振り向けているのが特徴です。JIA自身も2014年にマザーズ上場を果たしており、上場期において従業員11名、売上高10.5億円、当期利益4.2億円、IPO時価総額55億円という企業規模から足元では時価総額約1,200億円水準まで成長してきました。JIAグループでは大切な顧客基盤でもある中堅・中小企業の経営課題に寄り添うことを重視しており、「成長戦略実行支援事業」もその視点で事業展開をしています。シード・アーリー段階の資金調達支援、ミドル・レイター段階のVC投資、M&A支援、そして上場支援まで、企業の成長を幅広くサポートしています。
JIAの成長戦略実行支援事業
 私どものファンドは、N-3以降のミドル・レイターが中心です。これまで17社に投資し、6社がIPOを実現しており、上場確率は35%を維持しています。
JIAのVC投資業務

■ 監査法人アヴァンティアのTPM支援と監査哲学

梶原:私は「企業価値向上支援室(CVS)」という、IPO監査やスタートアップ支援を行う部署の室長をしています。アヴァンティアは2008年に設立し、M&Aは行わずオーガニックな成長を続けてきました。私たちの監査は、単に丸かバツかを判断するだけではありません。そのプロセスにおける気づき事項をベースとした成長支援を18年間続けてきました。クライアントとは同じ船に乗るスタンスで、同じリスクを共有しながら監査を行います。TPM支援における私たちの強みは、監査結果の文書化です。
 TPMで東証への説明責任を負うJ-Adviserが説明しやすいように、監査手続きや結果を徹底的に文書化して納品することを約束しています。私たちはプライムからTPMまで全方位でサポートしており、IPOを目指すプロセスこそが企業価値を高めると信じ、その支援を徹底しています。

監査法人アヴァンティア 企業価値向上支援室(CVS)の取り組み

 

■ 新興市場の環境変化とTPM

小原:まず新興市場の大きな環境変化について触れたいと思います。具体的には、①東証グロース市場の上場維持基準(時価総額100億円)の問題、②イグジットとしてのM&Aの一般化、③相次ぐ不適切会計問題の3点です。

梶原:M&Aの選択肢は、明らかに増えています。私たちが支援している企業でも、IPO準備と並行してM&Aのオファーを月次で天秤にかけているケースが実際にあります。

高根:100億円基準は、日本の資金調達環境においてミドル・レイター段階を実質的に担っていたグロース市場への「スモールIPO」の道を実質的に閉ざしてしまいました。これにより、成長途上のミドル・レイターステージの未上場企業によるエクイティでの資金調達が難しくなり、結果としてM&Aで規模を拡大してからIPOを目指すという戦略が必然になりつつあると感じています。

 

■ TPM上場の実態とメリット

小原:TPM上場企業は、社歴15年以上の企業が6割を超えています。また、所在地も東京以外が約6割を占めており、東京が7割の一般市場とは逆転しています。
TPM上場会社の特徴「地域別割合」TPM上場会社の特徴「社歴」

梶原:TPMは東京以外の企業様が多いというのは実感としてあります。これは一般市場と異なり、J-Adviser制度が機能しているためで、地方創生の文脈にも合致していると思います。

高根:地方のオーナー経営者にとって、一般市場で求められる株式の放出比率は、大きな抵抗感がある場合があります。高い議決権比率を維持したまま上場企業というステータスを得られる点が、TPMが地方企業に選ばれる大きな理由だと分析しています。

小原:同じく東証のアンケート結果によると、TPM上場のメリットとして「知名度・信用度の向上」が最も多く、次いで「人材の確保」が挙げられています。私の経験でも、TPM上場によって金融機関の信用が上がり、経営者の個人保証が外れた事例もございます。
企業経営者にとってのTPMの活用方法

梶原:上場後すぐに聞く分かりやすい効果は、やはり人材確保です。新卒採用などで上場企業というチェックマークが入る効果は絶大です。しかし、私どもが考える最大のメリットは、「IPOを目指すプロセスを通じた企業価値の向上」そのものにあると考えています。

高根:JIAの支援事例でも、TPM上場のメリットは明確です。金融機関との関係強化という点では、インサイトラボ社がTPM上場後8ヶ月で、メガバンク2行を含む銀行団から純資産を上回る規模の資金調達を実現しました。

 

■ TPM上場時のファイナンスとステップアップ

高根:JIAはTPM上場時のファイナンス環境の確保にも注力しています。2025年7月に私たちがJ-Adviserとして上場をお手伝いした山本通産社は、TPM上場時に自己株式処分型のオファリングを行い、約2.2億円の資金調達を完遂しました。TPMでのファイナンスは、買い手となる特定投資家の確保が現状においては難しいのが実情です。JIAは、グループで、全国の中堅・中小企業の取引先という広範なネットワークを持っており、そこに特定投資家移行が可能な顧客基盤を持つことが強みです。

梶原:TPMからのステップアップに関しては、グロース市場よりスタンダード市場を目指したいという企業が多い印象です。これはTPMに社歴の長い企業様が多いためでしょう。TPM上場に必要な監査証明は1期間ですが、求められる監査の基準は一般市場と同水準です。TPMは予行練習ではなく、本番と同じ会計基準での準備となりますので、だからこそその後のステップアップがスムーズに進むという側面があります。

 

■ TPM上場を目指す企業へ

高根:JIAは、成長意欲の高い中堅・中小企業を支援したいと考えています。資金調達の有無にかかわらず、M&AやVC投資といったJIAグループの総合力を活用して、皆様の成長を加速させるお手伝いが可能です。TPMでのファイナンスを多くの企業に選択肢としていただく環境を確保するためにも、私たちは特定投資家の確保に今後も注力して参ります。

梶原:TPM上場を目指す上で最も大事なのはコミュニケーションです。上場準備は、J-Adviserや監査法人と対話しながら進めるプロジェクトです。早い段階で予備調査を行い、課題を認識し、改善策を講じることが、結果としてスムーズでスピーディーなIPOへの一番の近道となります。

東京インデペンデンツ11月4日開催の様子

※「THE INDEPENDENTS」2025年12月号 P.6 より
※ イベント開催時点での情報です