■  老朽インフラと人材不足という社会課題

 日本の水道インフラは老朽化が進み、道路陥没事故は年間1,700件超。施設更新費用の不足、技術職員の減少、ノウハウ継承の断絶により、地方自治体は維持管理の持続性が危機に瀕しています。こうした中、従来の「自治体職員+大手企業」モデルでは、人口の少ない中山間地域まで手が届かず、地域間格差が拡大しています。

■ 自治体と地元事業者をつなぐ“官民共創モデル”

 当社は、DXとO&M(Operation & Maintenance)を融合し、地域インフラを支える新しい官民連携の形を創出しています。自治体から包括的に維持管理業務を受託し、地元の水道工事店や工務店と協働しています。24時間365日のモニタリングと現場対応を組み合わせ、熟練者の知見を自社開発のSaaSでデータ化・共有することで、地域を越えたナレッジの循環を実現します。

オフサイトサービス:現地で得たナレッジを活用したサービスを展開

■ 現場力とDXを融合した“サイバーフィジカルネットワーク”

 当社の競争優位は、現場対応力とDX運用力を両立するサイバーフィジカルネットワークにあります。現場での修繕・漏水調査・運転監視などのフィジカル対応から得たデータを、クラウド上のナレッジプラットフォームで分析・共有します。これにより、地理的に離れた自治体や事業者間でも同一水準の維持管理品質を再現できます。熟練技術者の経験がデジタル資産として継承されるこの仕組みこそが、他社には模倣困難な持続的競争力です。
フランチャイズ展開:サイバーフィジカルシステムを活用

■ 成長戦略と収益モデル

 原田氏は、水道事業に長年携わる中で現場の非効率を痛感し、2016年にO&M事業を立ち上げ、2021年に分社化して当社を設立しました。現在、大分県内18市町村のうち10市町村で業務を受託しています。中期的には131自治体導入・売上80億円(2029年)、長期的には300自治体・売上320億円・営業利益30億円(2035年)を計画しています。

収益源は、①自治体からの包括O&M受託収入、②地元業者とのフランチャイズ契約によるロイヤリティ収入、③自社SaaSの利用料・データサービス収入の三層構造。公共性とスケーラビリティを両立し、地域インフラ維持のプラットフォーム企業としての地位確立を進め、IPOに挑戦していきます。

ティールファシリティーズ 数値計画概要


 
コメンテーターより
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 奈良 大地 氏
 

 ティールファシリティーズ様は、水道という生活基盤を支えるインフラの運用保守につき、24時間365日現場対応を行いつつ(オンサイトサービス)、そこで得たナレッジを活用・データ化した上でのDXビジネス(オフサイトサービス)も提供する企業です。
 将来、水道管などの劣化は避けがたく、保守のための予算・人員確保も難しくなっていくであろう中で、自らが現場対応を行っているからこそ収集できるナレッジを用いて水道インフラの課題を解決していくティールファシリティーズ様のビジネスには、今後の発展が期待されます。

弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 奈良 大地 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年11月号 - P.5 掲載
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