<イベントレポート>
2025年8月12日 東京インデペンデンツ
@ Tokyo Innovation Base (TiB)
+ Zoom ウェビナー配信
■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/770
<特別セッション> |
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(パネリスト) 株式会社AI Samurai 代表取締役CEO 白坂 一 氏 |
株式会社ストライク イノベーション支援室 アドバイザー 石塚 吉光 氏 |
(モデレーター) インデペンデンツクラブ 代表理事 松本 直人 氏 |
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■ スタートアップM&Aの広がり
松本: 最近のスタートアップおよびVC業界では、M&AによるEXITが注目されています。本日は、仲介専業大手ストライクの石塚様と、M&Aでトヨタ系の完全子会社となったAI Samuraiの白坂社長に、実体験を踏まえた最新動向をお伺いします。
石塚: ストライクは1997年創業のM&A仲介会社で、2021年10月に代表取締役直下の「イノベーション支援室」を立ち上げ、スタートアップM&Aの支援を強化しています。グロース市場の上場維持基準の議論も追い風となり、IPOと並行したM&A検討が確実に広がっています。今後は事業会社の積極的な関与が、市場活性化の鍵になると考えています。
白坂: AI Samuraiは阪大・JAIST発の産学連携スタートアップとして2015年に創業いたしました。累計約10億円を優先株で資金調達し、当初は新興市場上場を目指しましたが、生成AIの台頭による外部環境の変化を踏まえ、東京プロマーケット上場に目標を切り替え、早期上場からのステップアップ上場へとEXIT戦略を変更いたしました。監査法人とJ-Adviser(Jアドバイザー)を選定し、上場予定日の内示まで受けましたが、VC側ファンドの満期到来に伴う早期キャッシュ化の要望と、当社の今後の展開を総合的に勘案し、M&Aを決断いたしました。
写真(左から):松本氏、白坂氏、石塚氏
■ バリュエーション評価の難しさ
石塚: 従来の事業承継型M&Aでは純資産や利益を基準に企業価値が決まりますが、スタートアップM&Aは将来成長で評価されます。そのバリュエーションギャップを埋めていくことも、M&A仲介会社の重要な役割です。
白坂: 当社は、欧米の大手企業と、知財領域に強みを持つトヨタテクニカルディベロップメント様の双方から、同時期に会社買収のご提案をいただきました。どちらに進むべきかを慎重に検討する過程で、それぞれの企業とのやり取りを通じ、海外企業と日本企業の文化的な違いや契約スキームの組み立て方の差を少しずつ実感し、大変勉強になりました。最終的には、社員の安心や今後の事業展開への期待を踏まえ、トヨタ系の完全子会社となる道を選びました。
■ M&A成功のポイント
松本: IPO準備のご経験は、M&Aにどのように活かされたのでしょうか。
白坂: デューデリジェンス(DD:買収監査)は当初8〜10か月の想定でしたが、最終的に3~4か月へ短縮できました。IPO準備の段階から監査法人を導入していたため、経理や内部統制が整備され、資料提出やDD対応が円滑になったことが大きいと考えています。スタートアップは大企業からの接触を待つのではなく、資金調達と同じ感覚で能動的に売り込み、複数候補を競わせるべきです。今後はトヨタ系の完全子会社としてグループに対して価値提供に努めるとともに、弁理士法人白坂の運営や、子どもの発明を支援する「発明寺子屋」にも力を入れてまいります。
石塚: 本件は、IPOに匹敵する成果を得られた優良なM&AによるEXIT事例だと考えています。企業の将来価値をどう評価するかに加え、意思決定とデューデリジェンスの迅速化、PMI(M&A後の経営統合)の効果をどう高めるかが、成功のポイントになります。
松本: IPOの価値が揺らぐものではありませんが、M&Aがスタートアップエコシステムの活性化に貢献することを期待しております。本日はありがとうございました。
写真(左から):白坂氏、石塚氏
※「THE INDEPENDENTS」2025年10月号 P.8 より
※ イベント開催時点での情報です