■ 見えない不安に、確かなものさしを

 当社は茨城大学発のスタートアップです。震災時に感じた目に見えない放射線による健康不安を「測れない」から「測れる」へ転換していきます。鍵となるのは、DNA損傷を可視化するγ-H2AXアッセイです。体に当たった線量ではなく、体内で実際に起きたDNA損傷の数を直接定量できるため、潜在リスクや個人差をより適切に把握できます。DINOWはこの評価法を全自動のポータブルデバイスに実装し、現場でも再現性高く測れる仕組みを整えています。
DNA損傷を可視化して発がんリスクを管理する

■  一滴の血液、約6時間で答えを

 茨城大学との共同特許技術である独自のマイクロ流路チップを核に、指先からの微量血液のみで、サンプル前処理から計測、解析までを装置内で自動化し、結果は約6時間でレポート化します。専門的なスキルやラボ設備に頼らず、どこでも同じ品質で測定できる点が特長です。導入は、病院、航空、原子力など職業被ばくの現場から進めています。デバイスはレンタルで提供し、従業員の検査回数に応じたサブスクリプションで運用します。レポートではDNA損傷数、推定被ばく、将来のリスク指標を提示し、勤務配分や休養設計、栄養・サプリ活用など具体的な改善提案まで伴走します。食品・サプリ企業向けの受託評価も開始し、適用領域を広げています。
DNA損傷評価デバイス開発

■ 市場拡張とロードマップ

 まず国内の医療領域での実装を加速し、順次、原子力・航空へと展開します。最終的には1兆1000億円と試算される世界の職業被ばく市場をタ-ゲットにします。さらに宇宙空間の高被ばく環境を見据え、2028年を目途に宇宙仕様デバイスの実装にも取り組みます。地上で培った自動化・信頼性をそのまま持ち込み、宇宙での健康管理インフラを支えていきます。現在はデバイス開発と医療機関と実証を進めており、プレシードラウンドの資金調達を計画中です。
DNA損傷評価デバイスのマーケット

 


 
コメンテーターより
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 植竹 彩佳 氏
 

 貴社の取組みは社会性が高く、ターゲットとなる事業分野の豊富さも魅力だと感じました。サプリメント分野のみならず、蓄積される健康データの二次・三次活用による新ビジネスの展開にも期待しております。また、保有特許を基盤にしたデバイスのライセンス展開は、事業拡大を安定的かつ効率的に進める有力な手段となり得ると考えられるため、海外ニーズに対応するためにも知財戦略と資金調達のバランスが肝要であると感じました。

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 植竹 彩佳 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年10月号 - P.10 掲載
月刊誌バックナンバーはこちらからご確認ください。