FiberCraze株式会社　代表取締役社長　長曽我部 竣也 氏
　×　弁護士法人内田・鮫島法律事務所　弁護士 鮫島 正洋 氏

鮫島：FiberCraze社は、繊維・フィルム素材に微小な孔（あな）を空けて様々な成分を閉じ込める岐阜大学特許技術を、防虫、抗菌、消臭、保湿など、多様な機能を繊維に付与する事で、医療、美容、アパレルなど幅広い分野での応用するスタートアップ企業です。

長曽我部：当社の技術は後加工で成分を繊維内部に閉じ込めるため、環境負荷が低く、効果の持続性、洗濯耐性、再利用性に優れています。また、成分は粒子サイズが合えば閉じ込めることが可能であり、用途開発の自由度も非常に高いことが強みです。現在、私の出身地である愛知県⼀宮市や、岐⾩地域の企業と連携することで、弊社の新素材と地域の⾼いものづくり技術を組み合わせ、 新たな素材を⽣み出していきたいと考えています。

鮫島：販売戦略や技術開発に関して、知財戦略をどのように位置づけていますか？

長曽我部：素材メーカーとして展開していくためにはブランディングが非常に重要であると考え、「Craze-tex®」という商標を取得しています。海外展開も視野に入れているため、海外での商標出願も準備しています。

鮫島：製造特許は岐阜大学から独占使用権を持ちますが、用途特許を独自で取得していくお考えはありますか。

長曽我部：私たちは繊維業界だけでなく、化粧品メーカーや資材メーカーなど異業種との共同開発にも力を入れています。最終製品に関する特許は共同開発先へ譲渡することも考えています。つまり、「”あな”の空いた繊維」というコア技術に関する特許に注力していき、用途開発はパートナー戦略を取っていきます。

鮫島：大企業との共同開発では独占契約を求められるケースも多いと思いますが、 ビジネスが拘束される契約を避ける事がスタートアップの成長戦略には重要となります。

鮫島：EUでは、化粧品、洗剤、肥料、人工芝等でのマイクロプラスチック活用禁止が勧告されています。ポリマーをコーティング剤に使用するマイクロカプセルではなく、環境にも優しい素材が注目されており、FiberCraze社の技術にとって追い風になっていると思います。

長曽我部：私たちのユニークポイントは、あらゆる成分を閉じ込め、豊富な機能性を付与できる点にあります。マレーシアで感染症予防のため実証実験など、各分野での機能性評価を行っています。今後はヘルスケアやアウトドア分野での繊維製品を共同開発し、量産サプライチェーンを構築していきます。

鮫島：強度低下を引き起こすことなく後加⼯で”あな”を空ける点も強みであり応用範囲が広がると思います。

長曽我部：2023年にシードラウンドで4000万円調達しましたが、人材不足が喫緊の課題であり、国際特許取得や人材採用などを考えると次の資金調達が必要だと感じています。「ミクロな技術で、人類と地球のミライを織りなす」というビジョンの実現のため、2030年のIPOを目指しています。