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「北海道のスタートアップ支援」

 <イベントレポート>

2024年4月19日 北海道インデペンデンツクラブ
@ 北海道大学オープンイノベーションハブ エンレイソウ
+ Zoom ウェビナー配信

■ イベント詳細 https://www.independents.jp/event/720

 

■特別セッション「北海道のスタートアップ支援」資料

  小野 裕之 氏(北海道大学スタートアップ創出本部 特任教授/副本部長)
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  藤間 恭平 氏(STARTUP HOKKAIDO実行委員会 事務局長)
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  高橋 正憲 氏(弁護士法人内田・鮫島法律事務所 パートナー)
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(モデレーター)

株式会社ABAKAM代表取締役/株式会社Kips取締役 松本直人氏

 

■特別セッション レポート

松本:本日は北海道におけるスタートアップ支援について、北海道大学スタートアップ創出本部の小野様と、STARTUP HOKKAIDO実行委員会事務局長の藤間様、弁護士法人内田・鮫島法律事務所パートナーの高橋様にお越しいただき、議論していきたいと思います。
まず、北海道全体でのスタートアップ支援組織として、去年の7月にSTARTUP HOKKAIDOが設立されました。具体的にどのような活動を行っていますか。

 

藤間:STARTUP HOKKAIDOは、札幌市と北海道庁、経産省北海道経済産業局に加え、民間組織が一丸となったオール北海道体制でスタートアップエコシステムの構築を目指す組織になります。また、上述した3行政に加え、委員長であるAWL株式会社CHROの土田様をはじめ、スタートアップ企業の方々にもメンバーに参画頂いている点が特徴です。
当組織では、"北海道らしいスタートアップ戦略"として「一次産業・食」「宇宙」「環境・エネルギー」の3つを重点分野としたアクセラレータープログラムを組み、北海道を「アジアのスタートアップアイランド」にすることを目指しています。
現在は、スタートアップの創出に向けた取り組みだけでなく、シードラウンド後の成長期における課題解決を目的としたプログラムも実施しており、資本政策のサポートや外部の人材紹介、経営者のマッチングなどを含めた支援を行っています。

松本:STARTUP HOKKAIDOは、道内の各組織に分散していたスタートアップ支援を、一箇所に集約することを目的に設立された組織ですが、この半年間でどのような成果がありましたか。

 

藤間:2018年頃から行政主導で北海道のスタートアップ施策が始まり、2021年頃には民間も含めた多数の組織がスタートアップ支援に取り組み始めました。結果、リソースの分散やイベント開催日、講演内容の重複が顕在化していました。そこで、2023年にスタートアップ支援に取り組む各組織が協働して「STARTUP HOKKAIDO」を設立することで、支援リソースや情報の集約が進み、よりスピード感を持ったスタートアップ支援が可能となりました。

 

松本:次に北海道大学でのスタートアップ支援に向けた取り組みについて教えてください。

 

小野:北海道大学では2023年4月にスタートアップ創出本部を新設し、「スタートアップ支援部門」と「アントレプレナー教育部門」の2部門体制で、学内研究シーズの事業化を目指したスタートアップ支援に取り組んでいます。
本組織の活動成果として、北海道大学認定スタートアップは37社(23年度3月時点)から56社(24年度3月時点)まで増加し、経済産業省が発表している北海道大学発ベンチャーは、63社(22年度10月時点)から103社(23年度10月時点)まで増加しました。

 

松本:北海道大学は、北海道全域におけるスタートアップ創出ネットワーク「HSFC(エイチフォース)」も率いていますが、取り組んでいる内容と取り組みの目指すものを教えてください。

 

小野:HSFCは、道内の17大学・4高専と地域企業や自治体、金融機関などが連携した組織で、北海道内にある大学等の研究機関から新たな研究開発型スタートアップを創出・育成し、地域の経済活性化を図ることを目指す、創業支援プラットフォームです。
重点領域として「フード・アグリ領域」「環境・エネルギー領域」「創薬・ヘルスケア領域」の3つを設定しており、北海道を「世界的課題解決先進地域」へと進化させることを目指しています。

松本:大学の現在の課題として挙げられるものを教えてください。

 

小野:まず北海道全体の課題として、東京に比べスタートアップ創出に関する感度が低いことが感じられます。周囲に起業家がいることで自分も起業を検討するというケースが一般的ですが、北海道ではその数が少なく、首都圏と比べるとかなり遅れてしまっているとの印象です。また、現在の国立大学は自力での大学運営が求められますので、研究成果を事業化し産業を創出することで、社会に還元する気運を学内に作ることが重要であると考えています。

 

松本:内田・鮫島法律事務所では、HSFCを含めた大学発スタートアップの支援に取り組んでいますが、どのような箇所が重要になるのでしょうか。

 

高橋:大学発スタートアップ特有の事情として考慮するべきポイントが3点あります。
まず、会社設立前に注意すべき点として、大学がスタートアップ設立前に、企業と共同研究契約を行った場合、スタートアップ設立後に研究に関する権利に関連したトラブルが発生することがあります。このトラブルをいかに防ぐかが1つ目のポイントです。
2つ目のポイントとして、特許出願の際に事業戦略に対する意識化が重要となります。
3つ目のポイントは、会社設立後に、研究に関する権利を大学からスタートアップに譲渡するフェーズで、スタートアップの状況に応じて、ストックオプション発行を選択肢に入れる等、柔軟な対応を採ることが重要です。大学発スタートアップ支援では、大学への対価還流とスタートアップの成長のバランスをとることに留意する必要があります。

※「THE INDEPENDENTS」2024年6月号 - P.4 より