「日本発・世界初の臍帯を原材料として活用した細胞医療で世界を変える」
<起業家インタビュー>
― 「へその緒で世界を変える!」という想いのもと2017年に起業
私は名古屋で生まれ育ち、忍耐力や「挑戦無くして成果無し」という雑草魂、最後までやり抜く力などの経営者としての素養を培いました。その後大学院では遺伝子工学を専攻し、臨床開発やメディカルアフェアーズの統括、製薬会社の執行役員などの経験を経てヒューマンライフコード株式会社の設立に至りました。当社は東京大学医科学研究所・長村登紀子先生の臍帯由来間葉系細胞のサイエンスと私の「へその緒で世界を変える!」という想いのもと、2017年4月に誕生いたしました。日本発・世界初となる臍帯を利用した細胞療法で、希少難治性疾患から加齢性疾患、特に社会的課題解決にインパクトの大きいサルコペニアに対する取り組みも加速しています。
― 臍帯を活用する細胞医療産業の特徴
当社は細胞医療のソースとして臍帯を活用しています。これは今まで法律で処分しなければならないものとして捨てられてきたものです。これを活用することで臍帯の持つ強みがそのまま当社の強みとして反映されます。現在の細胞医療のソースにはドナーの骨髄や脂肪を活用しています。これらはドナーへの痛みや侵襲性が高いといった問題があります。そこで私は「誰かを救うために誰かを傷つけることになるソースの活用は産業として普及しない」と感じ、臍帯に着目しました。臍帯はドナーへの侵襲性がないのに加え、胎児側の組織であることで細胞老化による不均一性が小さいこと、細胞増殖能力が高く製造時のスケールアップが図りやすいなどの優位性があります。これにより、一人の新生児の臍帯で約250人もの患者を救うことが可能となります。また、当社は臍帯を劣化させないまま備蓄するための技術を持っており、日本とアメリカでの特許も取得しています。
― 「日本オープンイノベーション大賞(厚生労働大臣賞)」を受賞
現在までに「胞衣及び産汚物取締条約」の改正の実現や疾患治療向けの細胞製品の製造法の確立、臍帯入手から製造、流通に至るまでのサプライチェーンの構築を達成、「再生医療等製品製造販売業」許可も取得しました。その中で、東京大学医科学研究所の臍帯バンクや販売会社としての持田製薬とのパートナーシップや米国進出に向けたニューヨークブラッドセンターとのパートナーシップを進めています。また、これらの実績が評価され、内閣府主催「日本オープンイノベーション大賞」で厚生労働大臣賞受賞、「J-Startup」の支援対象企業にも選定されました。
― 名古屋大学と産学連携オープンイノベーション
サルコペニアとは加齢による筋肉量が減少及び筋力の低下のことを指します。これは悪化すると要支援・要介護状態に陥る可能性が高い疾患です。そこで当社は2019年から名古屋大学と産学連携オープンイノベーションとしてサルコペニア治療に挑戦し、学術的価値の高い論文投稿に至りました。産学連携する中で1年前からサルコペニアに対する研究計画を煮詰めたことや、携わってくれた研究者や医師の土日をいとわぬ努力の賜物であることはもちろんのこと、大学側だけに任せるのではなく私自身がディスカッションの場に参加しプロジェクトマネジメントの機能を果たせたことも成功に至った要因と考えています。
― 臍帯由来間葉系細胞での治療への挑戦
前述のサルコペニアは市場性の大きな疾患なので加齢性疾患に対しては大きなサンプルサイズが必要となります。そこで当社の製品をいち早く届けるという想いもあり、まずは命までの距離が短く緊急性の高い希少難治性疾患への挑戦を優先的に進めています。白血病の治療として主に造血幹細胞移植を行うのですが、その後の重篤な副作用として肺合併症が起こります。これが起こると、2ヶ月後に約4人に3人の方が亡くなられてしまいます。しかし、現状は確立したい治療法が存在しておらず、悪化した際には人工呼吸器に入り肺移植しか根治療法はありません。そこに臍帯由来間葉系細胞での治療を行うという臨床試験を現在Phase2まで行い、生存率25.4%から大幅に改善する結果を得ております。当社の企業理念「つなぐ命のきずな つながる未来」に示されているように、実際にへその緒が人の命を救うことにつながっています。また、この成功を皮切りに肺関連疾患への臨床試験を進めると同時に、難治性自己免疫疾患への研究、サルコペニアに対する臨床研究を展開することで当社の事業価値を飛躍的に高めていきます。
― 今後の事業戦略について
まず、移植後非感染性肺合併症に対する臨床試験はPhase2まで終了し、最終のPhase3の実行性が確認できれば製品化が視野に入ってまいります。加えて、水平的な事業の展開として自己免疫疾患やサルコペニアに対する臨床試験も進めていきます。サルコペニアに対する臨床研究は日本では難しいという現状があるので、グローバルを視野に入れた開発戦略を有しており、来年末にはサルコペニア患者さんのデータ収集に取り掛かれるよう準備を進めています。肺合併症のPhase3と他の急性疾患及び/もしくは自己免疫性疾患で2本の臨床プログラム、これに加えてサルコペニアに対しての臨床研究を推進させていき、株式上場を果たしたいと考えています。
interviewed by kips 2024.1.19
【ヒューマンライフコード株式会社】 (→イベント登壇情報)
設 立 :2017年4月5日
所在地 :東京都中央区日本橋堀留町1-9-10日本橋ライフサイエンスビルディング7 5階
資本金 :2,070百万円
事業内容:再生医療等製品の研究開発・製造・販売
従業員数:24名
【代表者略歴】 ヒューマンライフコード株式会社
|
※「THE INDEPENDENTS」2024年2月号 - P.2-3より
ヒューマンライフコード株式会社
- 住所
- 東京都中央区日本橋堀留町1-9-10日本橋ライフサイエンスビルディング7 5階
- 代表者
- 代表取締役社長 原田雅充
- 設立
- 2017年4月5日
- 資本金
- 1,216,999,500円
- 従業員数
- 事業内容
- 再生医療等製品の研究開発・製造・販売
- URL
- https://www.humanlifecord.com/