「最強チームの作り方」
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インデペンデンツクラブ代表理事
秦 信行 氏
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)。野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。1994年國學院大学に移り、現在同大学名誉教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。2019年7月よりインデペンデンツクラブ代表理事に就任。
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スタートアップ、ベンチャーは、当たり前だが通常少人数の集団、謂わば「チーム」としてスタートする。従ってそこには経営学で言う所の組織論的な問題は当てはまらない。とはいえ、少人数の集団=「チーム」においても、力を十二分に出せる「チーム」とそうでない「チーム」が生まれることは容易に想像できる。スタートアップに関係しておられる皆さんなら、すごく上手く成果を上げているスタートアップと、個々のメンバーはそれぞれに優秀で戦略的にも間違っていないと思われるのに、中々成果が上がらないスタートアップ=「チーム」が出来てしまうことを経験上もご存知ではないだろうか。
では、そうした小人数の集団=「チーム」の優劣、「チーム力」を決定する要因は何なのか、その問題を明らかにすべく書かれた本を筆者は最近読んだ。その本が「かんき出版」発行の『最強チームをつくる方法』という本で、著者はダニエル・コイル。本の中の著者紹介によるとニューヨーク・タイムズ・ベストセラー作家とある。日本でこの本が最初に出版されたのが2018年なので、既にお読みになった方もいらっしゃるかもしれない。
著者は、バスケットや野球などスポーツ競技のチームだけでなく、レストランの厨房のシェフの話、飛行機のコックピットでのパイロットの話、黄金時代のベル研究所の話、軍隊の特殊部隊の話、創業当時のグーグルの話などなど、数多くの大きな成果を上げた「チーム」の事例を紹介しながら、少人数集団である「チーム」が力を発揮するための共通した要因をこの本で探し出している。
本の監訳者である一橋大学大学院経営管理研究科教授の楠木建氏は、「監訳者まえがき」において以下のように述べられている。
「優れた組織と優れたチーム、言うまでもなく成果をだすためには両方が必要となる。パフォーマンスは組織力とチーム力の掛け算で決まる。ただし、このところの大きなトレンドとしてパフォーマンスを左右する要因が組織力からチーム力へとシフト」しているのではないか、と。その点は経営学に疎い筆者には分かりかねるところもあるが、楠木氏はそれに加えて、「組織力が構造やシステムの設計の問題であるとしたら、チーム力はひとえに文化-そこにいる人びとに共有されている価値観」の問題であり、「本書の狙いは、優れたチームの基礎にあるその文化を解き明かすことにある」と記されている。
結論的に言うと、強い「チーム」の文化を醸成するためのキー・ファクターは何かについて、著者のダニエル・コイルは、優秀なメンバーを集めることでも、強力なリーダーに牽引されることでも、迅速な意思決定を行って実行に移すことでも、挑戦的で野心的な経営ビジョンを持つことでもない、要因は次の3つなのだと言う。それらは、①チームメンバーにとって安心・安全だと思える環境を整えること、②チームメンバーがそれぞれ自身の弱点、欠けているものをお互いにフランクに開示すること、そして③チームメンバー個々が納得する共通の目標を明確に持つこと。
皆さんはどのように考えられるだろうか。少し大部の本ではあるが、刺激的な本なので一読されることをお勧めしたい。
※「THE INDEPENDENTS」2022年10月号 掲載
※冊子掲載時点での情報です