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「「TOKYO PRO Marketを活用した地方創生モデル」」

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アザース株式会社
代表取締役 中川 周平 氏

1976年3月4日生まれ。大学卒業後、1998年(株)一六入社。2000年(有)こまち入社。2005年「麺鮮醤油房 周平」オープン。2007年当社設立、代表取締役就任。2012年香港進出。2013年より5年連続ミシュランガイド掲載ビブグルマン受賞。


講演レポート


■松山発のラーメン店が上場を達成

 私は14年前に初めて自分のラーメン店を開業した時から、裏表のないラーメン作りをしていきたいという想いで、化学調味料を一切使わず、具材もすべて手作りで提供してきました。「食文化を提案する」という経営理念のもと、ブームではなく百年、千年続く文化として食を追求し地域社会に貢献していくことを目指して、四国・中国地方を中心にフランチャイズを含め15店舗を展開しています。
 以前はあまり大きな目標を掲げずに地道に経営を行ってきましたが、愛媛銀行の役員から「君のように、ただ儲けたいのではなく、地域や社会への貢献を掲げている経営者には上場が向いているのではないか」というアドバイスを受けたこときっかけで上場を考えるようになりました。社内で会議をすると従業員たちも興味を持ってくれましたが、私が「将来は一部上場を目指せるようになりたい」と言うと、あるスタッフが「一部だけじゃなくて全部取ってやりましょう!」と言うほど、全く知識がないところからのスタートでした。
 数値基準のないTOKYO PRO Market(以下TPM)を勧められ、(株)OKINAWA J-AdviserとJ-Adviser契約を結んで上場適格性の調査確認などのサポートを受けました。監査法人ハイビスカスとの契約と税理士法人との綿密な連携によって、そこから約2年でのスピード上場に至りました。

■上場による信用獲得を海外展開に活かす

 実際に上場してメリットを実感したのは、海外出店の場面です。当社は現在海外に5店舗(香港3、上海1、タイ1)を展開しており、2019年6月には新たにスロバキアに進出する予定です。世界の投資家とのやり取りをしていると、誰もが「東京証券取引所」を知っていることに驚きました。東証から上場しているという点で、ラーメンの味ではない部分での信用に繋がり、地方からでも東京のラーメン店と対等以上の戦いが可能になっています。
 飲食店が上場する場合、その多くが規模拡大を目指しています。しかし私は、近年人手不足が深刻化する中で店舗数や年商を価値とする時代は終わり、グローバルな市場における新しい競争が生まれると考えています。従来の飲食店は、国内に複数業種を展開することでリスクヘッジを行ってきました。しかし今後は同じ業種での海外進出が新しいリスクヘッジのスタンダードになるのではないでしょうか。海外のフランチャイズ展開を推進していく場面で、ファイナンスを活用することも一つの選択肢になりうると思います。

■(株)OKINAWA J-Adviser 推進部 山下陽平氏からのコメント

 IPOの迅速性と地域金融機関の関与がアザース社のTPM上場の特徴です。中川社長はIPOの準備を始める前から「まともな経営をしたい」という想いで経営され、私たちが接点を持った時点で非常にクリーンな経営をしていました。これも2年という短期間で上場できた要因のひとつだと考えています。また、かねてから丁寧なサポートをしていた税理士法人の活用によって、管理部人員が2名というミニマムな体制で上場まで至ったことも特徴だと思います。


<会社概要>

設 立 :2007年6月1日
資本金 :14(百万円) (2018/3現在)
所在地 :愛媛県松山市松前町2-6-11
事業内容:ラーメンを主力商品とする飲食店事業
上 場 :2018年9月19日 東京証券取引所TOKYO PRO Market上場(9276)
時価総額:(公開時)87百万円
業 績 :18/3期 売上高 178 百万円、経常利益 9百万円
     17/3期 売上高 163百万円、経常利益 22百万円


2019年3月28日四国インデペンデンツクラブ@愛媛 プログレッソ イベントルームにて