「『メイド・イン・ジャパン』の信頼感と、『メイド・イン・オキナワ』の冒険心を胸に」
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<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明 氏(写真左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
レキオ・パワー・テクノロジー株式会社
代表取締役河村 哲 氏(写真右)
1972年生まれ。桐蔭学園高校出身。京都大学大学院工学研究科修了後、住友ベークライト(株)入社。エンジニアとして電気電子部品向け高機能樹脂の開発や、絶縁材料の開発リーダーを担当。2005年(株)ドリームインキュベータ入社、大企業の技術系事業戦略・新規事業立ち上げ戦略策定、技術系ベンチャー企業の事業運営支援・投資・上場支援・民事再生等に従事。2011年当社設立、代表取締役就任。
【レキオ・パワー・テクノロジー株式会社】
設 立 :2011年11月24日
資本金 :77,195千円
本 社 :沖縄県那覇市西1-20-13 たまきビル3F
事業内容:超音波画像診断装置の開発・設計・販売
URL :http://www.lequiopower.com/?lang=ja
<特別対談>これからのIPOスタイル
『メイド・イン・ジャパン』の信頼感と、『メイド・イン・オキナワ』の冒険心を胸に
■ジェネリック医療機器で世界に貢献
小原:貴社は、特許切れの技術を用いて低価格での生産が可能になった超音波画像診断装置(エコー)を「ジェネリック医療機器」として、教育現場や自由診療領域、さらに発展途上国に向けて展開しています。河村:当社の超音波エコーはUSB接続でパソコンやタブレットに接続して駆動し、軽量かつ外部電源不要、従来品の10分の1という低価格を実現しています。大手メーカー製品が十分に行き渡っている保険診療領域ではなく、高価であるゆえに医療機器が必要であっても購入できず不足しがちな領域に対して展開することで、医療空白地帯の根絶を目指しています。
小原:世界には医療を満足に受けられない人が40憶人以上いると言われています。特に途上国では、治安の不安定さや財源難による医師や医療機器の慢性的不足が今もなお大きな問題になっています。妊産婦、乳幼児死亡率が圧倒的に高いアフリカで普及すれば、多くの命を救うことに繋がりますね。
河村:手技と読影についての教育コンテンツや画像データベースなどの学習支援プラットフォームからサービス提供することで、一般人でも超音波エコーを使いこなせる仕組みを構築することが目標です。スーダンを皮切りにアフリカやアジア、中南米各国で営業を始めており、世界約50カ国に向けて展開しています。
■エンジニアからコンサルタントへの転身、沖縄での起業
小原:河村さんはエンジニアを経て(株)ドリームインキュベータでコンサルティング業務をされたユニークな経歴をお持ちです。河村:堀紘一氏の啓発本を読んで感銘を受けたことがきっかけで、たまたまエンジニアを募集していた(株)ドリームインキュベータに転職しました。その現場で1から経営について学びました。
小原:その後、なぜ縁もゆかりもない沖縄での起業に至ったのでしょうか。
河村:前職を退職する直前に東日本大震災が起こり、すぐに家族と訪れた沖縄でそのまま起業しました。人が多すぎず穏やかな風土やもちろん、那覇空港の国内外へのアクセスの良さも魅力的だったからです。沖縄県はベンチャーに対する支援が厚く、当社も県の「新産業研究開発支援事業」に採択されたほか、2017年には沖縄振興開発金融公庫からの出資も受けています。
■家庭用ヘルスケア機器としての国内展開を進める
小原:発展途上国でのサブスクリプションモデルの確立には少なくとも4、5年はかかると思います。海外展開を進めながら、日本国内でもう一つビジネスモデルを創るべきではないでしょうか。河村:超音波エコーは現行の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)では管理医療機器に分類され一般人が自由に使用できません。現在は、治療診断予防目的でないという用途を明確にし、教育機関向けに用途を制限した非医療機器として販売しています。将来的には誰でも使える新規家庭用管理医療機器として分類されることを目指しています。
小原:日本の医療業界では遠隔医療や画像診断等に関して規制が緩和されつつあります。サンドボックス制度*の活用も検討してみてください。(*現行法の規制を一時的に止めて特区内で実証実験を行うことができる制度)
■医療機器のクラウドプラットフォーム創出を目指す
小原:途上国でのモデルと日本ですぐに事業化できるモデルを組み合わせることで着実に企業価値を高めていくことが重要です。河村:当面は国内外での教育用機器としての販売などでランニングコストを賄いつつ、量産とエコー学習支援のプラットフォーム構築を目指すための資金調達を検討しています。診察時の断層画像とエコーの位置映像をクラウド上に蓄積し、ユーザー間での読影結果へのアドバイスや情報交換、蓄積されたデータに基づく教材の作成、AIによる読影のアドバイスに活用する計画です。
小原:医療分野で展開するためには、国内外含めたリーガルチェックに相当な時間と資金を要します。IPOを急ぐのではなくユニコーンとして成長していく戦略もあるのではないでしょうか。社会的意義の高い事業だと思うので、是非拡大に向けて頑張ってください。本日はありがとうございました。
*対談後のコメント
小原:「医療」・「ヘルスケア」・「グローバル」等、貴社のビジネスモデルは魅力にあふれています。一方で、どれも収益モデルを確立するには時間と費用を相当に用することが想定されます。そのため、今から大きな資金調達をすることが必要であり、そのために事業計画および資本政策を早急に詰めることが重要です。社会的意義が非常に高いビジネスであり、多くの支援者と共に事業を遂行されることを期待しています。河村:一般人がエコーを使う世界を作るためには、エコーの新しい使い方を一つ一つ開発してそれを社会に浸透させてゆくことが必要です。現在いくつかの用途開発に目処が立ち、その一つは2019年中にみなさまの生活の中にお目見えする予定です。数年後にはエコーを使って自分で自分の体内を見るのが当たり前になっている。そうして世界中のヘルスケアのレベルが向上することは、私に取って無上の喜びです。
※「THE INDEPENDENTS」2019年3月号 - p24-25より
※掲載時点での情報です