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「パイフォトニクス(株)、(株)くしまアオイファーム、(株)ファイレスキュー」

公開


早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事



No.875 パイフォトニクス株式会社(代表取締役 池田 貴裕 氏)

池田氏は、2006年に当社を設立し、ホログラム再生用LED照明ホロライトを発明しました。「人と人をつなぐ光ホロライト-安心・安全・面白い・新しい光の使い方」をビジョンとして、光技術を中核に多くの業界のプロフェッショナルと連携・融合により、「感動」を生み出す新しい価値観を提供しようとしています。さらなる経営体制強化のために、次の3点の課題をクリアにする必要があります。

①「感動」共有・拡大の持続性

東京オリンピック時に富士山をホロライトを使って感動の拠点にするという想いが、多くのプロフェッショナルと共に実演し、磨きをかけ、実現に近づきつつあります。幅広い光技術をプロのニーズと融合しながら、イベントや工場現場に応用してきました。イベント演出は、一時的存在感が共有できても、そのリピート・標準化により、持続的拡大がない限り、感動ビジネスとはなりません。

②ビジネスモデルの明確性

浜松を光技術によって新たなモノづくりの聖地にしたいという想いがあります。次々と各業界のプロフェッショナルを光技術と社会ニーズの融合というビジネスディベロップを企画し実行することは成功しつつあります。しかし「製品開発+量産+事業開発+技術営業+システム納入後のアフターサービス+顧客ニーズ対応」のバリューチェーンのどこで儲けの源泉を考え、いかなる人員配置をしようとしているのかを明確にする必要があります。

③研究開発型ベンチャーのプラットフォームビジネス化

幅広い知財取得と製造技術を持ち、スマイルカーブの川上を押さえ、顧客対応力という川下を抑える能力のある会社は、プラットフォームビジネスとして飛躍する可能性があります。このためには、オープンイノベーションを仕掛ける事業連携・資本連携/反映組織戦略が不可欠です。


No.876 株式会社くしまアオイファーム(代表取締役 池田 誠 氏)

池田氏は、さつまいもの品質と用途の拡大で、農業の6次産業化が可能であると信じ、2013年法人化をしました。香港や台湾に輸出を開始し、国の6次産業化企業としての認定を受け、加工品を開発し、国内販売、さらにJETROの輸出有望案件発掘事業に採択されました。サツマイモ文化を世界に伝えていき、過疎地域発農業ベンチャーとして初のIPOを目指しています。このためには、次の3点の課題をクリアする必要があります。

①九州の農家による農家本業の自律化支援の充実を

多くの既得権益の強い国内バリューチェーンを避けながら、海外でブランドを確立する戦略をとり、高品質維持により輸出先での腐敗率を通常の10分の一に抑え、香港やタイを中心に海外輸出の日本のNo.1シェアになりました。国内よりも圧倒的な市場の広いアジアで優位に立っています。将来の海外生産も視野に、既にキャラクターによるブランド確立と共に、進出可能地での商標権登録を早期に検討する必要があります。少し話題の日本の名称は、すべて中国が抑えている場合が多いので、ご注意ください。

②海外商標を含むブランド化を海外から

推薦歯科医の写真も含め詳細な情報が開示されますので、中核となる優良歯科医といかに信頼関係を構築するかが重要になります。歯科医紹介サイトはすでに先発競合サイトがあります。後発としてユニークな収益モデルを成長させるには、中核優良歯科医と信頼関係を結ぶことができる足腰の強い営業力が不可欠です。

③種芋・育苗の新品種の開発を

日本の品種の多くは公的機関が抑え、海外への持ち出しの規制もあり、また遺伝子組み換え品種について日本は後ろ向きです。しかし、世界人口90億人になった時には、気象異変と共に食糧不足は目に見えています。サツマイモの天候異変に対する強さも含め、耐性力のある新品種も味と共に大学との共同開発を強化してください。


No.877 株式会社ファイレスキュー(代表取締役社長 飯田 大貴 氏)

飯田氏は、環境配慮型製品のない消火器市場でアジアNo.1を目指して商品開発を重ね、日本や中国等各国で国家認証を申請しています。2021年以降にIPOを目指していますが、次の3点の課題をクリアする必要があります。

①圧倒的な性能の高い環境にやさしい製品の開発・改善

既存製品と比較し初期消火の実証実験で圧倒的な優位さがあり、環境に優しい成分であるので、当面の競争優位性はあります。成分配合秘匿のために特許申請はしていませんが、同様な消火能力の類似品が出るのは時間の問題です。消火能力・消火容器・消火方法に関する開発・改善を常に行う能力がないと10年単位で勝ち残れません。

②国家認証の必要なため既得権益の壁の乗り越え手法

初期消火ニーズは高く、消火機器は国家認証が必要で既得権益がすでにあります。この壁に守られて、消火技術のイノベーションがなかったのは確かです。開発・製造・市場の連携戦略がどの程度強固なものであるかまず再検討する必要があります。事業拡大には、BtoBビジネスとするか、一気に拡大するためにOEM供給で圧倒的な開発製造プラットフォームとなるか、BtoCビジネスに挑戦するかの長期戦略が必要です。

③新たな消火器の必要・普及市場とブランド力

住宅密集地にも、高層ビルにも初期消火が必要で、製造的には極めてローテクです。類似品の出現は防ぐことができませんので、開発力以上に、国内外でのブランド力の早期確立が不可欠です。特許については申請取り下げをしましたが、大手の開発品で知財訴訟を仕掛けたら資金的に対応できません。少なくても主要進出国での製品の販売と同時に商標権取得を急ぎ、ブランド力の確立・浸透を図ることが重要です。


2018年6月15日インデペンデンツクラブ月例会 東京21cクラブにて