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「マイクロニードルの中空技術で医療用注射針から自動車センサーまで開発するナノテクベンチャー」

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【宮地 邦男 略歴】
1964年2月10日生まれ。石川県立小松高校卒業。金沢大学理学部化学科卒業後、住友セメント(現住友大阪セメント)株式会社 入社。2004年、(株)アルネアラボラトリ代表取締役専務就任。2014年、当社設立、代表取締役就任。

【シンクランド㈱ 概要】
設 立:2014年2月3日
資本金:84,350千円
主要株主:宮地邦男、VC
所在地:神奈川県横浜市鶴見区小野町75-1 リーディングベンチャープラザ1号館502号室
事業内容:光学・電気技術を用いた医療機器および検査測定機器等の製造・販売


<起業家インタビュー>

シンクランド(株) 宮地 邦男氏

「マイクロニードルの中空技術で医療用注射針から自動車センサーまで開発するナノテクベンチャー」


マイクロニードルの中空技術で医療分野を開発するナノテクベンチャー。
光学と電気処理技術で生産技術のイノベーターを目指す起業家。


■ 貴社のコア技術について教えてください。

当社は光学と電気信号処理技術の2つのコア技術を持っています。光と電気という異なる領域を融合することで様々な事業展開をおこなっています。事業分野は「マイクロニードル事業」「センサー事業」「光学系機器事業」の3つですが、千葉大学尾松教授のレーザー照射によるマイクロニードル製造技術をコアとして事業展開を図っていく計画です。

貴社のマイクロニードルの特徴は、『中空』に加工できるナノテク技術です。

従来の金型による製作では不可能であったマイクロニードルの「中空」加工を、「光渦」 レーザー照射により瞬時にニードル形成可能となり、更にその一連の微細加工で中空化ま で実現した点です。従来の金型タイプと比べて、対象材料の表面にレーザー照射を行うだけで製作可能なので設計変更にも柔軟に対応できます。更に中空による適量注射ができる事で、新しい医療の開拓に繋がっていきます。

■ 貴社は基本特許の独占実施権を許諾されております。

光渦レーザー技術は、千葉大学と北海道大学が共同出願として有する基本特許がベースであり、当社は両大学から独占実施権の許諾を受けています。中空に関する技術は、当社の単願特許として2件のPCT出願を行いました。今後も、周辺技術で4~5件の出願を予定しています。

■ 宮地社長のトラックレコードについて教えてください。

住友セメント(現住友大阪セメント)にてセラミックスの射出成形部門や光通信用部品の開発営業に関わりました。2001年に某半導体関連企業からの出資を受けて創業した光通信機器ベンチャーでは、2004 年に代表取締役専務に就任し、製品開発と営業開拓に努めながら黒字化を達成しました。しかし「大手電機メーカーのためでなく、消費者のニーズを実感できるモノづくりがしたい」という思いが募り、2014年に当社を設立し、当初はIoT関連製品開発を行っていましたが、2015年に以前より 存じ上げていた千葉大学尾松教授のマイクロニードル技術に着目して、新たな事業を立ち 上げました。

■ ベンチャーキャピタルファンドから出資を受けました。

2016年にNEDOのSTS事業(シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援)に、当社の「光渦レーザー」を利用したインスリン注入用マイクロニードルの事業化が採択され、認定VCである「リアルテックファンド」から出資を受けました。「リアルテックファンド」はユーグレナやリバネスなどが設立されたモノづくり系企業を支援するVCファンドです。

■ 今後はインスリン注射以外にも用途の広がりがありそうですね。

幅広い材料でマイクロニードル加工が可能ですので、スキンケア・化粧品への展開や撥水効果・親水効果等の表面改質、ワクチンDDS(ドラッグデリバリーシステム)としての活用など、様々な可能性があります。マイクロニードルの量産体制を構築して安定供給するために、今年の12月にシリーズBの資金調達を行う予定です。将来のIPOに備えた管理部門の強化も図っているところです。

■ マイクロニードル技術を活用した製品開発には事事業会社とのアライアンスがポイントになりますね。

当社CTOの及川は光通信大手で最先端の光通信技術の研究開発に携わってきました。最近は大企業からの提携オファーが増えてきましたので、CTOの補佐ができるよう技術担当者の採用が課題です。

■ 本日はどうもありがとうございました。最後に今後の事業展開について教えてください

当社技術の認知度を向上させるために、シンボルとなる自社プロダクトを作りたいと考えています。また幅広くマイクロニードル技術を展開する上でも、自社での量産試作工場を持つことが 急務だと考えています。「生産技術のイノベーター」として、世の中に必要とされる技術を一つでも多く開発していきたいです。

※「THE INDEPENDENTS」2017年10月号 - p4-5より