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「「これまでのベンチャー投資環境の常識を我々が打ち破ります」」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社日本クラウドキャピタル
代表取締役CEO 柴原 祐喜さん(写真右)
カリフォルニア大学、明治大学大学院卒。システム開発、経営コンサルティング会社を経営。日本クラウドキャピタルを創業し日本初の第一種少額電子募集取扱業として株式投資型クラウドファンディングサービスを開始する。

【株式会社日本クラウドキャピタル 概要】
設 立 :2015年11月26日
資本金 :115,000千円
所在地 :東京都品川区東五反田5-25-18
事業内容:第一種少額電子募集取扱業務、FUNDINNO(ファンディーノ)の運営業務
URL :http://www.cloud-capital.co.jp///

<特別対談>これからのIPOスタイル

「これまでのベンチャー投資環境の常識を我々が打ち破ります」


日本初の株式投資型クラウドファンディングの誕生

小原:起業のきっかけについて教えてください。
柴原:高校卒業後、起業するために学びたいと思い渡米しました。カリフォルニア大学在学中に企業価値算出について学びました。その後、日米の資金調達環境の差異に興味を持ち明治大学大学院にて未上場企業価値算出について研究をしました。2012年、同研究科で大浦と出会い、ヒト・モノ・カネ・ITの経営資源を調達できる環境作りを目指すことで意気投合し、その第一歩としてシステム開発会社を設立しました。
小原:株式投資型クラウドファンディング事業を立ち上げたのはいつですか。
柴原:2013年にアメリカでスタートした株式投資型クラウドファンディング「エンジェルリスト」と同じものを日本でやりたいと思い準備を進めていました。2015年5月に金融商品取引法(金商法)が改正になったことを機に当社を設立しました。
小原:投資環境が未整備な状況下の日本で株式投資型クラウドファンディングを行っていくのは、実務的に相当大変なのではないでしょうか。
柴原:はい。日本初の第一種少額電子募集取扱業者として登録を受けるために苦労しました。事例がないため西村あさひ法律事務所様、関東財務局様、日本証券業協会様と擦り合わせしつつ規程類等を私と大浦が中心となり自分達でまとめました。そのおかげで第一種少額電子募集取扱業として法令理解がどこよりも深く理解していると自負しております。苦労した産物もあり金商法の知識を持ち開発ができるためスピーディーに金商法に即した開発が行えるようになりました。特に審査や本人確認等のバックオフィスのシステムはほぼ自動化できております。

集合知による事業審査

小原:新しい技術やサービスを提供しているアーリーやスタートアップへの投資判断は難しいです。
柴原:革新的な企業ほど、金融機関の投融資の判断が進まず、資金調達が困難になるケースが多くあります。クラウドファンディングの場合、「集合知=みんなで決める」という特徴がありますので、市場に判断を委ねることができます。ここで成約したものは成功確率が高い会社とみなされますので、そういった会社に対して金融機関と連携して継続的な資金調達環境を作っていきたいと思います。
小原:常陽銀行がクラウドファンディングの調達額に応じて融資額を決定するという取り組みを開始しました。
柴原:当社でもいくつかの銀行とデータ連携を進めています。当社は審査した会社の事業計画書や決算書などのデータを全て保有しておりますので、金融機関が融資を検討する際にそれをそのまま使っていただければスピードアップにつながります。また、当社でスクリーニングをかけておりますので、デューディリジェンスの効率化も図れます。

今後のビジネネスモデル

小原:クラウドファンディングだけで上場するのは難しいと思います。
柴原:株式投資型クラウドファンディングは、事業者と投資家の両方のデータが集められますので、今後はこれらのデータを2次利用していきたいと考えています。まずは、SNSやストックオプションを活用した人材調達のサポートを行っていきます。
小原:ベンチャー企業の求める、IPO経験があり資金調達能力が高いCFOのような人材はなかなか集まりません。ストックオプションですと安価にスペックの高い人材を集められますね。
柴原:様々な企業とのAPI連携もすすめています。これにより、審査時に登録したデータから簡単に助成金の申請やクレジットカード、プリンターの与信申請などを行うことができます。
小原:柴原社長ご自身はどんな事業家になりたいですか。
柴原:日本からグーグルのような企業が出て欲しいと考えています。アーリーやスタートアップでの資金調達がしやすい環境であれば、もっと世界へ出ていける企業を創出できると思っています。
小原:貴社は、日本の古い体質の資本市場に変化をもたらす画期的な会社だと思います。海外の投資家も安心して投資ができるような世界に通じる投資環境をぜひとも整備していただきたいです。


<対談を終えて>

小原:同じクラウドファンディングと言っても、寄付型や購入型には、資本市場にインパクトを与えられません。株式投資型のクラウドファンディングには「投資家」を育成したり投資を受ける企業を成長させる力があります。その意味で貴社の発展をおおいに期待するところであります。株式上場については、いわゆる「初物」であることから証券取引所や証券会社が慎重になる可能性もあるので、今から上場に向けて着実に準備をしておく必要があるでしょう。

柴原:ベンチャー、中小企業の資金ニーズを満たせていないのが現状であると考えております。ベンチャー、中小企業の資金ニーズを満たす一つのソリューションとして株式投資型クラウドファンディングは重要な役割を担うと考えております。まずは、株式投資型クラウドファンディング業界を牽引していきしっかりと市場を形成していきたいと考えております。

※「THE INDEPENDENTS」2017年5月号 - p22-23より