「「工場の見える化事業の市場戦略」(株)テクノツリー 木下武雄」
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<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
株式会社テクノツリー
代表取締役 木下 武雄さん(左)
1942年愛知県東海市生。名古屋大学工業学部卒業後、神戸製鋼所入社。主に産業機械の機械設計と品質保証に従事。1996年当社設立、代表取締役就任。
<株式会社テクノツリー概要>
設 立:1996年7月4日
資本金:30,000千円(株主 経営陣)
所在地:兵庫県明石市魚住町534-7
事業内容:
コンテンツ事業、システム事業
<特別対談>これからのIPOスタイル
工場の見える化事業の市場戦略
小原:54歳で株式会社テクノツリーを設立し、今年で創業20周年を迎えられます。従業員は100名を超え、年商10億円を超える規模まで当社を育て上げてきました。まずは、これまでの沿革についてお聞かせください。
木下:神戸製鋼では機械設計のエンジニアでしたが、ソフト産業に注目していました。独立後は、産業機械のマニュアル制作を請負うことからスタートし、大手自動車メーカーの整備マニュアルやオーナーズマニュアルなども手掛けるようになり、当コンテンツ事業は売上の6割を占めています。2004年より確保してきた資金や技術者をシステム事業に投資し、2010年に現在の注力事業であるタブレット端末ソリューション「XC-Gate」を開発しました。
小原:「XC-Gate」は誰もが使えるExcelを活用したことが大きなポイントですね。導入企業にとって、既にあるフォーマットをそのまま利用することができる点で、広く普及する可能性を秘めていると思います。
木下:タブレットが普及しはじめた時、これを製造現場で活用すればペーパーレスで効率的な業務改善が可能になるとひらめいたのが開発のきっかけです。ExcelとタブレットOSの相性が課題でしたが、これをブラウザ経由にすることで解決の糸口が見え、特許も取得しています。まさにコロンブスの卵として産まれたシステムです。
小原:今年も注目を集めているIoTは、製造業にとって外せないトピックスです。スマートファクトリー化し、リアルタイムにあらゆる情報をいかに集約できるかが、製造業の競争力を大きく左右する時代になりました。
木下:「XC-Gate」では、タブレットによる帳簿データのデジタル化に加えて、工場での大きな情報源であるPLC(プログラマラブル・ロジック・コントローラ)や各種センサからのデータを集約することも可能です。これによりタイムリーな「工場の見える化」が実現し、工程進捗の迅速な把握や間接部門含めた管理コストの削減など、局部的な改善にとどまらない大きな効果をもたらします。これらをタブレットとシステムだけで、他の1/3以下のコストで導入できるのが「XC-Gate」の強みです。
小原:既に錚々たる大手メーカーとの取引実績もありますが、今後「XC-Gate」を中小規模のメーカーにも拡販していくには新たな販売戦略が必須です。
木下:明石本社含め、拠点は東京・多治見・名古屋・広島・福岡と6ヶ所あります。これに、ネットマーケティングやコールセンター、販社網の構築など、顧客を中心に全てのチャネルを連携する「オムニチャネル戦略」を推進していきます。提携の引き合いも多数来ており、「XC-Gate」を中核とする総合的なソリューションへと進化させていきたいと考えています。忘れてはならないのは、それを支える人を育てることです。 小原:2018年3月期を基準に上場を目指しておられますが、事業計画が随分控えめに感じます。販売戦略を織り込んだ数値計画をきちんと落としこむべきでしょう。「タブレット×Excel」という点では、小売業などへの横展開も十分可能です。
木下:上場までは手堅い計画をと考えていましたが、上場前後の事業戦略に時間軸を設定しなければなりませんね。コンテンツ事業に関わっている整備士を活用した新事業も計画しており、東証一部まで駆け上がる成長ストーリーを描きたいと思います。課題は資本政策とエンジニアの採用です。
小原:資本政策は中立的な立場から意見を求めるとよいでしょう。当社もこれまで数多くの企業の事業計画策定や資本政策に係る助言をおこなってきました。ぜひ株式上場を実現し、日本の製造業の競争力向上に貢献しつづけてもらいたいと思います。本日はありがとうございました。(2016年2月8日)
※「THE INDEPENDENTS」2016年3月号 - p13-14より